メインの壱

□大人になったんです
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その当時のオレは16歳で、どこにでも居る普通の、しがない高校生。
彼は25歳の、夢を拗らせ自営業を営む傍ら、アルバイトで家庭教師をしながら生計を立てるフリーターのような人だった。

きっかけは今じゃもう朧気すぎて思い出せないけど、まぁ、そういう関係だった。
オレは確かにあの当時は彼のことが好きだった。
そういう関係を持った以上、オレは短絡的に恋人同士なんだと思っていた。
毎日他愛ないメールを送った。
返信はあまりなかったけど、たまに返ってくるメールでは、家庭教師の授業以外でのデートの約束を取り付けてくれた。

ある日、事実を突きつけられた。

「彼女が居るんだ。最近はあんま上手く行ってなかったけど、またヨリが戻ったんだよね。だからさ、」

あぁ、フられた。と思った。

「お前とは恋人同士とは言えないけど、それでも良かったらまだ俺と付き合ってくれよ」

それってつまり、セフレ宣言ですよね、分かります。
でも、子供なオレは、それがシビアな大人の世界で、そこで喚いた挙げ句に身を引くなんて言えば、面倒臭い奴認定を受けるんだろうと思って素直に受け入れた。
それが25歳の大人を相手に、見合った正しい答えだと思っていた。
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