メインの壱

□指先に
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退屈。
学生って退屈。
でも学校は楽しい。あの人が居るから。

土方君。オレの一番の友達。
オレが想いを寄せる人。

綺麗な顔。色っぽい声。しなやかで筋のある体つき。大人びた雰囲気。
暇さえあれば人間観察ばかりしていたオレが、それを一切止めて、土方君に夢中になった。
土方君ただ一人を見つめ続けていた。

土方君の細長い綺麗な手、指先を見るのが大好きだった。
不精なのか、いつも少し爪が伸びていた。
たまに二枚爪になったり、不意に割れたりして切り時を悟るらしい。
今はまた1ミリくらい伸びている。


ある日土方君がオレに告げた。

「彼女、できた」

ふと、土方君の指先を見ると、爪が綺麗に切られていた。
男としてのエチケットなのだろうか。
彼女への気配りだろうか。
妙にいやらしく感じた。
そして、どん底に悲しくなった。
土方君は、近々その彼女を抱くんだろう。

オレは努めて明るく、笑顔で、土方君の手を取り

「おめでとう。大人になるんだねー」

なんて、冗談めかして言ってみた。


オレはもう土方君を目で追うのは止めよう。
きっと、これからの様々な変化に、どんどん傷付いて行ってしまうから。


やっぱり、学生って退屈。

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