メインの壱

□弱味
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俺があいつから離れらんねえのは、
あいつが俺を良く理解しているからだ。
勘の良さは天性だろう。
言わずとも望んだものをあいつは差し出してくれる。

あいつは俺を甘やかしてくれる。
だが、俺が人として駄目にならねえのも、あいつが居る御陰だ。
あいつの前では駄目な自分を晒け出せる。
好きにして良いと、言ってくれる。

「オレは監察ですから口は堅いんスよ」

そう言って頭を撫でてくれるんだ。

その言葉に何の躊躇いもなく安心させられた。

欲しい言葉をくれる。
欲しい距離をくれる。
欲しい温度をくれる。

あいつは俺を「土方十四郎」で居させてくれる。
本当は俺なんかよりずっと切れ者で、努力家で、忍耐強く…時に冷酷。
今日も「鬼の副長」の隣で、間抜けの振りをしてへらへらと笑っている。

俺ぁつくづく思うんだ。
あいつが居なければ、俺は今頃どうなっていた?
この組織を、重圧を、背負う日々に耐えられていただろうか?
端っからそんな器じゃなかったかも知んねえな、俺は。

あいつが、俺の、隣にいてくれるから。
あいつが、生きているから
俺は今日も生きていけるんだ。


あいつを監察兼助勤に選んだ、俺の天性の勘の良さに感謝しよう。

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