捏造回顧録

□捏造回顧録10
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俺はこれでも監察の端くれです。
あ、どうも。取り調べのしつこさには定評のある男(に、なりたい)吉村です。

諦めの付かない俺は、この日を狙っていました。

「酒宴」

はい。副長を酔わせて、過去を聞き出そうと思います。

「副長、呑んでますか?」
「あぁ。俺はもうイイよ。御酌なら近藤さんとこ行けよ」
「まぁまぁそう言わずに。局長の所はもう行きましたから、次は副長ですよ」

副長は、あまりお酒は強くないらしい。
すでに目は据わりかけていて、真っ赤な顔をしている。

「俺はなぁ、身内とは言え、総悟と監察の注いだ酒は呑まねえことにしてんだよ。何仕込まれてっか分かんねえから」
「過去になんかあったんですか?」
「有ったって言わねえよ。ただ、そんだけ警戒する必要があるって事だ」

身内にも敵が多い。難儀なお方だ。

「無礼講だろ、土方。ビビってんのか?土方。呑めよ、土方コノヤロー」

近くにいた沖田さんが一升瓶を抱えてやって来た。

「ビビってなんかねえよ!テメッ、向こう行ってろよ!!」
「ほらやっぱりビビってんじゃないすか。ビビってねぇならつべこべ言ってねぇで呑めよ土方」

沖田さんは副長の口元に、その一升瓶をぐいぐい押しつけていた。

沖田さんも酔ってるように見えるけど…これって大丈夫なの?

「沖田さんは確か未成年じゃ… 」
「バッキャロー!!この時代は未成年飲酒とか関係ねぇんだよ!!」
「この時代ってどの時代ですか!?」

俺は沖田さんに見事なアッパーを頂いた。

「今更そんな細けぇことはいいんでさぁ!!原作の世界観とか設定とか、端から有って無ぇもんなんでぃ!!」

2014年現在、未成年者の飲酒は法律で堅く禁じられています。
きっとこの世界ではそんな法律は存在しないんでしょうね…。

沖田さんは副長に散々絡んでいた。
すると向こうの方から

「沖田隊長ー!!」

山崎さんの声がした。
沖田さんがそっちを振り向くと、山崎さんは杯をくいっと飲み干すポーズをして
「いつもの“コレ”やりましょうよ」
と、ニコニコして言った。

「おう、飲み比べか!いいですぜ、やりやしょう」

沖田さんは嬉しそうに山崎さんの方へ行ってしまった。

「助かった…」
「やっぱ山崎さんは流石ですね。でも大丈夫なんですかね、飲み比べなんて」
「あぁ。あいつは心配ねぇ。何も効かねえように仕込んであるから」

そんな事もしてるんですね、山崎さんは…。
俺はまだまだ山崎さんの足下にも及ばない。

「副長と山崎さんの信頼関係って、なんかその…絶対、ですね。監察として、ちょっと妬けちゃうな」
「ん、まぁな。そりゃあいつがそんじょそこらの奴とは違うからな。あいつはな、昔っから世話焼っつーか、お節介っつーか、気遣いの良くできる奴で…」
「惚気みたいですね」

俺は少し笑いながらそう言うと、副長はハッとして黙ってしまった。

「てっ…てめえももう良いからさっさと他行けよ!!」

副長は照れ隠しのようにそう言って顔を背けてしまった。
コレはまだまだ副長に話を訊くのは無理っぽいな。
副長が駄目なら…
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