捏造回顧録
□捏造回顧録23
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「総ちゃん」
「あねう…え?」
その声に沖田が振り返ると、そこに居たのは、荷物を抱えた山崎だった。
「似てました?」
「なんでぃ退じゃねえか!」
沖田はにこやかに、山崎にハイタッチをすると見せかけ、山崎が右手を揚げた瞬間に手刀でチョップを脳天に食らわせた。
「つまんねぇ真似すんじゃねえよ」
「えー、せっかく声帯模写、練習してきたのにぃ…」
山崎は涙目になりながら頭の天辺(てっぺん)をさすった。
「所でおまえさん、なんで江戸に居んだよ?」
「あ、食料を届けにですね…」
そこに近藤が通り掛かった。
「総悟、見回り中に何油売ってんだ」
「あ、近藤さん。今田舎から出てきたばっかりの家出不良少年を補導しておりやした」
「なにぃ!?」
近藤が沖田の向こうを覗き込むと、そこには
「へへ…捕まっちゃいました」
照れ笑いをする山崎が居た。
「ザキィ!!」
近藤は山崎の頭をグシャグシャと撫でた。
そして沖田は、先程の一連の山崎の声帯模写の話を近藤にした。
「どれ、見せてみろよ」
「え、あ、じゃあいきますよ?ゴホンッ…近藤さん」
「おぉ!?顔見ちまうとあれだが、なかなかのもんじゃねえか、なぁ!?総悟」
「イヤ、姉上はもっと艶やかで清涼感のある声ですぜ」
「えー?総くん、期待に満ちた顔して振り返ったじゃない」
「何だよ、総悟もなんだかんだ言って騙されてんじゃねえか!ハハハハ」
(近藤さんと談笑してる総くんって、たまにほんとにミツバさんみたいな顔で笑うんだよな…やっぱ姉弟って似てるな)
「あ、そうだ。これから屯所(仮)戻って土方のヤローにも試してみやしょうぜ」
(あの人にそんな事して大丈夫かなぁ…?)
山崎はワンクッション考えた。
「振り返ってただオレが居るだけじゃつまらないから、こうしません?」
山崎は総悟の前髪をちょちょいといじった。
「総くん、ちょっと笑ってみて?」
「ん?こうですかい?」
沖田は目をひん剥いて、ニタリと笑って見せた。
「いや、そんなどす黒い笑みじゃなくて、もっとこう、自然に」
「自然に?」
沖田と山崎はしばらく笑顔の練習をした。やっとの事で山崎の納得できる笑顔を修得させる事が出来た。