捏造回顧録
□捏造回顧録23
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屯所(仮)に戻り、二人してそっと土方の背後に近寄る。
沖田の前髪をスタンバイさせて、目で合図をすると、山崎は沖田の背後に隠れ
「十四郎…さん」
すると土方はすかさず振り返る。
「ミツ…バ…」
目を見開き、頬を染めてミツバにそっくりな笑顔を浮かべた沖田を見つめた。
「じゃねえです。総悟です」
すぐに前髪をささっと戻し、土方を見下すようにニヤリと黒い笑みに切り替わった。
「何だよ、びっくりしたじゃねえか…」
すぐにまた沖田に背を向け、ミツバの影に動揺した自分を、内心恥じた。
沖田と山崎は声には出さず爆笑していた。
「土方さん」
そして山崎が沖田の背後から土方を呼びかける。
「何だよ次は山崎の真似かよ。はいはい、お前も芸が達者だな…」
そう言って仕方なしにと言った調子で振り返った。
沖田の背後からひょっこり顔を出す山崎は、もう一度「土方さん」と呼び掛けた。
「やっ…山崎…山崎!!」
土方はとっさに立ち上がり、両腕を開いた。山崎は土方の胸に飛び込もうとしたその時、山崎の見える風景は回転し、見事な投げっぱなしジャーマンが極まった。
「つまんねえ真似すんじゃねえよ、ったく…」
そう言って土方は手を払った。
「あーあ」
沖田は他人事のように感嘆の声を上げた。
山崎の投げ飛ばされた先に近藤が居て、苦笑いで山崎を見ながら
「皆腹も減ってるし気が立ってんだよ」
と言った。
先の山崎が投げ飛ばされた音を聞きつけ、原田がその部屋に慌ててやって来た。原田は山崎を見つけ、他の部屋に待機していた隊士達に声を掛けた。
「おい!皆!山崎だ、山崎が居るぞ!」
すると、声を掛けられた隊士達は一斉にその部屋になだれ込み、皆が山崎に向かって満面の笑みで駆け寄った。
「み…みんな…」
山崎はそんな皆の、自分に向ける好意に感動して、目を潤ませた。
が、
山崎は隊士達に踏みつけられ、皆は山崎が持参した荷物に群がった。
「食料!食料ねえか!?」
その姿は、まさにハイエナだった。
「…うん、こうなることは薄々分かってたけどね…」
山崎は自分の立ち位置を再確認した。