捏造回顧録

□捏造回顧録19
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稽古場を宴会場代わりにして行われた昨晩の壮行会の跡。
一つ一つ片付けていく。

「本当に行っちゃったのね」

ミツバは器を下げながら、しみじみと呟いた。その表情は決して寂しそうなわけではなく、目を細め、今後の彼らの活躍に期待をしている顔だった。

「行っちゃいましたね。この村も、オレ達の日常も、急に静かになっちゃった」
「うふふ、ホントそうね。あの人達の声が聞こえない道場なんて、何か少し不思議な感じ。それにもいつか、やっぱり慣れてしまうのかしらね…」
「総く…総悟さんも行ってしまいましたしね。手が掛からなくなった分、寂しかったりしますよね」
「そうね…ずっと毎日一緒に居たんだもの。しかもあの子、あんな感じでしょ?生活に大きな穴がぽっかり空いちゃったみたいで、もう、退屈で退屈でしょうがないの」

ミツバは笑いながら言った。

「ねえ、山崎さん」
「はい?」
「あの子の事を、総悟さんだなんてよそよそしく呼ばないであげて。あなたはあの子の、初めて出来た歳の近いお友達なの」
「え?あ…はい…」
「ずっと、あの子のお友達で居てくれるでしょ?」

ミツバは山崎の方を見て微笑みながら言った。

「はい!」

山崎も笑顔で返事をした。
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