セクピスパロ
□魂現
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IH準々決勝桐皇海常戦……
その戦いの火ぶたが今、切られようとしていた。
黄瀬は久々に会った青峰への宣戦布告も済ませ、笠松にあることを伝えていた。
「先輩、もし、俺が何をしても止めないでくださいっス」
「黄瀬?」
「気付いても、止めないでください。先輩は前を向いて走り続けてくださいっス。」
どういうことだ、と笠松は訊ねようとしたが、試合が始まり、空気は緊張感を帯びた。
ほどよく漂っているのは獣特有の強い警戒心……
青峰が発する重種の圧力であった。
「(さっすが、青峰っち)」
山猫は勿論、きっと大神でもきついだろう。
でもニホンオオカミの血はどんどん貴重になっていく過程で……
「(フェロモン尋常じゃなくてキラキラオーラ半端ないんスよね……)」
だから、それでは全然動じない。
もっと本気で来いよ。
桐皇海常戦第1Q、黄瀬は青峰を圧倒していた。
+++++
一瞬、黄瀬の後ろに銀色がいたような気がした。
いや、いた。
試合に集中している青峰や観客席の斑類は気付かなかったかもしれないが、彼は気付いた。
「(黄瀬ちん……?)」
最も近くで客観的に試合を見ていた紫原だけが、第1Qで黄瀬の魂現を垣間見たのであった。
しかし、彼は……
「(銀色ってことは俺とお揃いだ〜わーい)」
あまり関心を抱いてなかった。
紫原はそういう人間であった。
++++++
試合は終盤、青峰は一つの確信へとたどり着く。
黄瀬は猫又でも中間種でもない。
そのことにやっと気付いたのだった。
「(こいつ…………狼か…っ!!)」
根拠は三つ。
一つ目は前から感じていた違和感。
二つ目はさきほどから見え隠れしている銀色。
三つ目はこの模倣。
ストリートで磨いた自分のスタイル。
黄瀬はそれを贋物と言うには失礼な模倣を見せた。
それが中間種にできてたまるか。
んで、俺が敷いているのは猫又重種の支配だ。
それをもろに浴びて手のひら見せない猫又がいるわけねーだろうが。
つまり、こいつは……
「(忠誠を誓わせる側……重種。んで後ろに見える銀色の大型犬…つか狼。あれは……)」
日本で最後の犬神人の重種。
その存在に気付いたのは、たった数人であった。
しかし、ニホンオオカミと見抜いたのはいなかった。
ただ、黄瀬涼太は犬神人重種の狼である。
そう気付いたのが青峰の他に笠松、紫原、火神、黒子の四人であった。
そして、試合終了のホイッスルが鳴り響く……。
チームとしてはほぼ互角。
差はエースの差であると言われた試合は桐皇の勝利で幕を閉じた。
(次ページ補足)