セクピスパロ
□怪しい
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先日の黄瀬と高尾の出掛けを遠目に見た黒子と火神は今日も今日とて部活に精を出していた。
でも、まぁ、気になるのは彼ら二人の関係。
海常高校と秀徳高校とでは距離もある上に高尾は違う中学である。
接点と言っても緑間くらいしかあげられず、昨日の様子ではそれだけではないのは明白。
「なぁ、黒子。今度あいつらストバスに誘わねぇ?」
「え?」
「ほら緑間とか黄瀬とか……そしたら色々わかるかもしんねーし?」
「はぁ……。」
そう黒子が息をついた瞬間、誠凛高校の体育館の扉が開かれた。
そして、一瞬にして距離をつめてきて黒子に抱きついた人物は話題の渦中の黄瀬であった。
「くぅぅぅうろこっちぃぃぃい!!」
ぎゅー、と抱き潰す勢いで抱きつく黄瀬。
見えない尻尾が見える気がする。
「(ほんと、こいつが猫とか嘘じゃねぇの?)」
「黄瀬君どうしたんですか?」
「今日、海常の体育館の点検の日で部活無しなんスよ!でもIH近いし、よし、誠凛に行こう!ってわけっス!!」
なぜそうなる。
ニコニコ満面の笑みの黄瀬に心の中でつっこんだのは火神だけではないだろう。
「安心してほしいっス!ちゃんとバスケ用品は持ってきたっス!」
そういう問題じゃねぇよ!
と再び誠凛バスケ部の心情は重なる。
いや、この人は違った。
「別にいいんじゃない?うちにもいい刺激になるわ。いい?」
「監督さん……!もちろんっス!!」
かくして、誠凛バスケ部にイレギュラーが入った部活は始まった。
++++++
「っはー、マジで化け物だな……黄瀬涼太。」
「何、日向君。怖気づいたの?」
「ちげーよ。普段とのギャップがすげぇっつーか……」
まるでバスケの黄瀬は肉食獣みたいな?
という言葉が黄瀬の耳に届く。
「(あながち間違ってないっスけどね。)」
実際黄瀬は肉食動物の遺伝子を継いでいるし、気性は穏やかとは言い難いだろう。
でも…
「(サルだからなんとなく察しられるんスよねー)」
斑類だとどうしても自分で相手の魂現を確かめたくなるが、サルの場合は印象である。
だからこそ、誠凛の主将や監督はそう思ったのだろう。
だからこそ、火神や黒子、キセキの世代や海常の人は気付けないのだろう。
まぁ、
「(気付かせる気もさらさらないんスけどね)」
気付かれたらどうなる?
間違いなく求婚されるだろう。
犬神人の重種、最後のニホンオオカミ……
その種の貴重さは先祖返りよりも上だ。
そして、多くのブリーリングの依頼がくるのだろう。
「(俺はあの人じゃないと嫌っス……)」
きゅっと切り返し、そのままシュートに入る。
だが、それは案の定止められることになった。
「させねーよ!!」
あぁ、またこいつジャンプ力高くなった。
と黄瀬は思った。
外来種のベンガルトラ。
青峰と同じ猫又の重種。
進化を続ける現在の黒子の光。
「(偽物の俺とは全然違うっス)」
その事実に嘲笑を口元に浮かべながら黄瀬は思考を巡らせる。
偽物の皮を被った俺はバスケにおいて本気を見せたのは本当に一瞬しかない。
しかもその直後にはそのことの重大さに気付いてすぐに皮を被りなおした。
あの練習試合の一瞬……
それだけが不覚だったのだ。
でも、まだ俺は本気を隠し続けている。
「だぁーー!!もう!!もう一回!!もっかいっスよ、火神っち!!」
「お、おう。」
やはり火神は黄瀬が猫又というのは信じられず、犬神人ではないかと疑問を抱くと同時に……
やっぱり重種じゃないか、と思うのであった。