セクピスパロ

□義務
1ページ/1ページ

虎がいた。
キセキの世代がばらばらになり、誠凛高校に進学した黒子が見つけたのは、虎だった。
そんな彼の名前は火神大我といい、
何の因果か彼はバスケ部に入部したのだった。

「はぁ!?おまっ……えぇ!?」

「うるさいですよ、火神君。」

そして、黒子は火神と一緒に日本一を目指すと決めた。
そのために、先祖返りであることを火神に話したら、冒頭の通りである。

幸い、マジバには猿人しかいなかったが。

「普通の犬だと思ってた……。」

「まぁ、覚醒したのが小学校でしたから、もうほとんど斑類ですし、仕方ありませんよ。」

「お、おう。まさかキセキの世代も先祖返りなのか……?」

きょとん、と効果音がつきそうな勢いで黒子の思考は急停止した。
しかし、それはすぐに回りだした。

「彼らは生粋の斑類ですよ。……日本を代表する家の出ですけど…。」

「マジかよっ!!?」

火神はアメリカで過ごした時間が長いため、日本の斑類事情には少々疎い。
そのため、黒子は一から説明する羽目になったのだ。

「……で、理解できました?」

「おう。でもよー、黄瀬って何者なんだ?」

重種の集まりのようなキセキの世代の中での異端……
それが中間種の黄瀬であった。

だが、先日練習試合で感じたことは……

「あいつ、犬だろ。」

「まぁ、否定はしません。」

しかし、黄瀬の魂現は猫又なのだ。
キセキの世代の手にかかっても謎に包まれたままの黄瀬の魂現。
第三者火神の目をもってしてもはっきりとわかっていないようだ。

「んー……んぁ?」

「?どうしたんですか?」

「あれ、黄瀬と高尾じゃね?」

「あ、本当ですね。」

二人の視線の先には仲良く談笑する高尾と黄瀬の姿があり、その姿はどこか幼馴染に再会したような雰囲気に満ちていた。


++++++

誠凛との練習試合の後、黄瀬は緑間と同時に旧友と再会した。
リアカーをつけた自転車をこいでいた彼……

高尾和成だ。

そのときは緑間がいたので詳しくは話せなかったが、二人は待ち合わせをし、また会うことを約束していた。
それが本日だ。

「て……じゃなくて高尾っちー!」

「おーう。ら、っと涼ちゃん!」

へーい、と意気投合のようにハイタッチを交わす。
そして、どちらからともなく話しだす。

「いやー、マジこないだは驚いたっスわー。まさか緑間っちと同じとこだったんスね。」

「そうそう。おかげさまで毎日気使う。」

「えー一人だけならまだいーじゃないっスか。俺の場合それが六人っスよ?」

「うっは。俺だったら無理。」

「実際ばれかけたっス。」

「え、大丈夫かよ?」

「暗示ばっちしっス。」

元々お互いおしゃべりのためか話題は尽きない。
中学のこと。今のこと。
バスケのこと。
裏事情のこと……。

「んで、高尾っちはやっぱ緑間っち?」

「んー、どうだろ。真ちゃんのこと嫌いじゃねーけど……そしたらあちらさんに迷惑かかりそうじゃん?」

「接木雑種(キメラ)っスか?」

「そうそう。そういう涼ちゃんこそどうなの?」

「俺は……やっぱ難しいっス。やっぱ本能に染みついちゃってるんで……」

そう苦笑する黄瀬は実はまだ童貞である。
異性にもまぁ、同性にもモテる黄瀬だが未だ誰も抱けず、そして抱かれずにいた。

「やっぱり、好きな人同士じゃないと」

「でもさ、涼ちゃんって好きな人……」

続けようとした高尾の言葉を切ったのもやはり黄瀬だった。
人差し指を高尾の唇にあて、首を横に振る。

「いるっスよ。でも、叶わないから……我慢しなきゃって思ってるんスよ。」

そう言って、黄瀬は儚く、そして美しい微笑を浮かべた。
その背景には里から出た人間に課せられる二つの事があった。
一つ、里の秘密を漏らさないこと。
一つ、必ず子供を作ること。

特に二つ目において、黄瀬はその本能に刻みつけられたものに邪魔されていた。

番は一匹。
その一匹を愛し尽くすことこそ我らの誇り。

そんなニホンオオカミの血が黄瀬の義務を邪魔しているのだった。





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ