セクピスパロ
□守るべきもの
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部室を開けると、そこに久しぶりに見る赤色の王様がいた。
「赤司っち!?久しぶりっスねー!風邪って聞いてたんスけど大丈夫っスか?」
「まぁね。それより聞きたいことがあるんだ。」
ぎくり、と強張る気配がした。
赤司の瞳は真実しか求めていない。
だから黄瀬は、あまり赤司には近づこうとしていなかった。
油断していた……。
「なんスか?」
「絶滅種の里って知っているか?」
「それって都市伝説じゃないっスかー?どうしたんスか急に。」
そう、黄瀬は笑おうとした。
いつも通り、へらりとした笑顔の仮面を貼りつけようとした。
だが、それは妙に口元が歪んだいびつなものになってしまった。
「俺の魂現は人魚のシャチだ。つまり、その里の創立者の子孫だ。とぼけても無駄だぞ、黄瀬。」
「とぼけてなんかないっス。」
ぎり、と黄瀬は赤司を見据える。
しかし、赤司はそれをものともせず続けた。
「僕の父はそこの里出身でね。かなり前に漏らしたことがあるんだ。」
「……。」
「ニホンオオカミの少年が来た、とね。」
黄瀬は何も言わなかった。
だからこそ赤司は悟った。
自分の予想は間違っていなかった、と。
「その名前を『ラストワン』というらしいよ。元々里にいた同い年の天狗と仲が良くてよく遊んでたらしくてね。二人とも優秀だったらしい。」
くすくすと笑いを洩らしながら赤司は続ける。
その間、黄瀬はずっと無言であった。
しかし、その視線はじ、と赤司を捉えて離さなかった。
「で、俺は黄瀬が『ラストワン』と読んでるんだが、違うか?」
「……赤司っちにはわかんないっスよ。俺には……俺と天狗っちには里の皆の命がかかっている。だから、俺には……」
このことを隠し通す義務があるんスよ。
次の瞬間赤司の意識はブラックアウトした。
+++++
赤司っちに色々なことがばれた。
きっとこれからもたくさん疑問に思うだろう。
「(でも、赤司っちには一つ分かってないことがあってよかったっス)」
里では力の制御と変え魂、そしてヒエラルキーで優っているものに効く暗示を習う。
赤司は最後の一つを見逃していたのだ。
「(長時間、俺の目を見てたからね)」
ごめんね、赤司っち。
その後、赤司の暗示は解けることはなく、黄瀬の魂現も里のことも他のチームメイトに漏れることなく、キセキの世代はばらばらになったのだった。