彼らの約束
□本気
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「やっと捕まえたぜ、黄瀬。」
倒れ込んだ二人の間の沈黙は青峰によって破られた。
異様に近いことに対しては特に気にしていないらしい。
むしろ、黄瀬は完璧な無表情になった。
口元を黒い布で覆っていても分かる無表情。いつもは甘い雰囲気を醸し出す瞳も今では獰猛な獣のように金色だ。
「ほんっと…何スか?俺の何が問題?」
「はっ…嘘くせぇ笑顔よりマシな顔になったな」
「そ。すげぇどうでもいいんスけど。
つか重い。退け」
「あぁ?誰に物を言ってやがる」
「はぁ?頭どころか耳も悪いんスか?
アンタに言ってんだよ」
ぴりぴりと先日とは比べ物にならない殺気が互いから放たれる。
特に、黄瀬の殺気が、だ。
ここまで殺気を出すということは本気に近い。
「…………最後の忠告っス。退けろ。じゃないとその首、斬る」
「なぁ、お前……」
最後の忠告までも無視してまで青峰は続ける。
「火神大我は生きてんぞ。」
「どうしてその名前をっ!!」
「赤と黒の不思議な髪色、二股の眉毛、背中には大きな太刀…違うか?」
「あってる…………でも、どこで……?」
動揺した様子の黄瀬に青峰は満足そうに口元を歪めた。
釣れた。
そう思った。
「俺、知っての通り頭が悪いんだわ。
悪いけどよく覚えてねぇな?
あ、お前が俺に勝てたら思い出せるかもな?」
「!!!」
一瞬。そう一瞬だった。
黄瀬はその一瞬で青峰を自身の上から押し退けた。
そして、ゆらり、と立ち上がる。
今までに感じたことのない殺気。
間違いなく殺しに来る。
「(死人に口なしって……こいつの耳には入んねぇか……)」
「生きてる……。それだけ聞けりゃあ満足っス……。
でもアンタは許せない。
俺に何の恨みがあるかは知らないっスけど……ほんっといい加減にしてほしかったっス。
海常忍隊七番組長、黄瀬涼太、全力でアンタの命狩ってやる……!!」
青峰はこのとき震撼した。
こいつだ。
俺が求めていたやつはこいつだ。
こいつが欲しい。
「いいぜ。やってみろよ。できるならなぁ!!」