彼らの約束
□修行
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鳥がさえずる声。
川がせせらぐ音。
木々がさざめく音。
そして最後はあまりに物騒な金属音。
忍の朝は早すぎる。
それを青峰は寝惚け眼で思うのだった。
自己管理。それが滞在の最大限の規則。
盗まれても怪我しても一切責任は負いません。
最悪、死んでも保障しません。
昨夜、黒子が説明された言葉が脳裏によぎる。
まぁ、それなりに覚悟をしていたつもりだが……
いささか物騒すぎやしないか。
容赦なく散乱し、畳に突き刺さっているのはクナイである。
もっと言えば、すぐそこの中庭には数人忍が気絶している。
どうしてか、昨日の事情も知らない忍に襲撃されたからだ。
……返り討ちにしてやったが。
「(半端に身体あったまっちまったな……)」
素振りをしようにも愛用の長刀がない。
小刀での代用では軽過ぎてまた違う。
さて、どうしようか……。
++++++
ひゅーと青峰は口笛を吹く。
来てよかった。
やっぱりあった。
修行場。
育成の里っていうくらいだからあると思い、青峰が探したのはこの修行場。
広く、大きな音を立ててもさほど気にならない場所。
迷いなく青峰はその修行場の中に入った。
「ちーっす」
ばしゃり、
瞬間足元に響く水音。
「は?」
ちなみに、雨漏りなどはしていない。
しかし、忘れてはいけない。
海常の忍は水上や水辺でこそ真価を発揮する。
それが顕著になるのは黄瀬家の人間だということを。
「(黄瀬……?つかこの水どこから……?)」
そう、水は床一面を覆っていて、その中心で黄瀬は瞑想をしていた。
波紋一つ立たず、ただ、そこに黄瀬はいた。
その姿がどこか神格じみていて、青峰はつい声をかけた。
「何やってんだ?」
「新技の練習。水は自前」
「自前!!?」
「海常の秘技っス」
そう言って黄瀬が立ちあがると、とたんに水は消えていき、普通の道場になった。
……そういや今吉サンも草木とか操ることができるとか言ってたっけ…?
「それより、俺がけしかけた忍たちは蹴散らしてきたみたいっスね」
「犯人、お前か。」
青峰が言及すると黄瀬は心底楽しそうにくすくす笑う。
そんな黄瀬は壁にかけてあった木刀を二本取り、
「それじゃあ、一手やるっスか?」
放り投げた。
「上等」
次に笑みを浮かべたのは青峰であった。