刹那の一時

□料理男子
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帝光中学校には給食制というものが存在しない。
そのため生徒は弁当を持参するか、食堂を利用するのだ。
そして黄瀬涼太は前者の人間であった。


「黄瀬はいつも弁当だね。」

「むぐ、?」

今日も今日とて帝光バスケ部レギュラーは食堂に集まって一緒に昼食を取っていると、
赤司は黄瀬に疑問を投げかけた。

「もしかして、モデルのせいかい?」

「いや、カロリー計算面倒なのもあるっスけど……四個まとめて作った方が楽なんスよ。」

その言葉にかたまるのは黄瀬を除くキセキの方だった。

今、何と言った…?
四個まとめて作る…だと?
モデルに部活、さらには家事までするのか…!?

「き、黄瀬君、朝自分で作ってきているんですか?」

「?はいっス。姉ちゃんたちも母さんも料理壊滅的で父さんは低血圧で朝弱いし……まぁ、基本弁当は俺担当っスね」

「…………。」

帝光バスケ部はテスト前などの特別な期間以外朝練がある。
しかも朝早くにだ。
その前から、起きて、四個も弁当を作っているだと…?

「まぁ、さすがに夕飯は無理っスから父さんが作ってるっス」

「黄瀬ぇ」

「?なんスか?」

「俺の定食のコロッケやるからその卵焼き、ひとつくれ。」

「マジっスか!?やったぁ!どーぞどーぞ青峰っち!はい、あーん!」

あーん…だと!?

またまた固まる青峰大輝中学二年生。

元々、好意を抱いている黄瀬の手料理を食べたいという下心からの提案だったが、
むしろ大量のおつりが付いてかえってきた。

「ほら、食べないんスか?」

「いや、く、食う…。」

く、このあざとイエローめ…!
可愛いんだよっ!!
首かしげんな!!

そんなことを考えながら青峰は黄瀬がだしてきた卵焼きを口に入れた。

ふんわりとした食感に甘めに味付けられたそれは……文句なく美味かった。

「どーっスか?」

「うめぇ」

「やった!今日の卵焼きは自信あったんスよ!」

「あぁ、マジうめぇ。毎日くいてぇわ。」

「作ってこよっか?」

…………。

「い、いいのか?」

「全然!一個増えたとこで変わんないっスよー?」

「じゃ、じゃあよろしく……。」

「あ、その代り、放課後毎日1on1ね!?」

「おう」




「あいつらは俺たちの存在に気付いているのだろうか?」

「さぁ?僕は元々影が薄いので、」

「むー俺も黄瀬ちんのおべんと食べたーい」

「紫原、何度言えばいいのだよ。箸の持ち方を直せ。」

「そうだ、今度皆で弁当を作ってきてシェアしようか?」

「さんせ〜」


この日から、キセキの面々が食堂でお弁当を広げる姿が度々みられるようになった。

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