☆頂き物

□兎角様
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そこは、不気味なほど無機質な部屋だった。
意識の向かうままに目を開けると、その部屋の外観がぼんやり浮かび上がった。デザインの欠片すらない。ただコンクリートで固められており、立ち上がらずともそこが密室であることが容易に分かる。とりあえず実感を持つためにそっと膝を曲げようとするが、

「クッ……」

激痛に呻く声と鎖の冷たい音が静寂に反響した。

何故、俺はここにいる?

……何故、だって?笑わせんな。分かってるくせに。

「気が付いたの?」

悦を含む声にはっとして顔を上げる。わざとらしく靴音を響かせて、その野郎は俺の前に立ち塞がった。

「サル……」

忌々しく視界に入ってきたのは、昔の旧友……俺たちの赤の国を裏切った男、猿比古だった。美咲が反論する間もなく、猿比古は馴れ馴れしい手つきで彼の頬を撫ぜた。

「美咲ぃ?やっと会えたね」

「……ざけんなよ。どうして裏切った?!」

ともに国を守ろうと誓った仲だった。それなのに……何故、お前は、サルの野郎は……

「てめぇが青の国に作戦漏らしたせいで……俺たちの国は負けたんだぞ!俺たちのダチも……大勢、死んじまったんだぞ」

そう、切り込み隊長の俺がこうやって捕虜となっているのは、最大の皮肉だ。
美咲は眉間へ力を込めた。

「そうだね……そうやって美咲は、全部俺のせいにするんだ」

前半は反省の色も見えたその声は、最後に妙な色へ変わる。
何、考えて?……その怪しい雰囲気に美咲の全身でシグナルが鳴り響く。

「みーさーきぃ?」

息を吹き込むように猿比古は美咲の耳元でささやく。びくっと美咲の身体が震えたその瞬間、彼の軍服の全面は鋭いナイフで思いっきり引き裂かれた。

「何して!……」

「俺はね、許せなかったんだよ?」

つと猿比古の白い指が美咲の露わになった肌を伝う。厭らしい手つきに美咲は強張るが、四肢は拘束されていて抵抗出来ない。猿比古のなすがままに美咲は身体を反らせた。

「美咲はそうやって国のことばっか考えて……」

当然だろ、と言い返す口は猿比古によって塞がれる。生き物のように熱い舌が、美咲の口内を執拗に犯した。ようやく猿比古の唇が離れたころには息も絶え絶えで、全身が蒸気する自分がいた。

「俺のこと全っ然、見てくれないからさ……」

そんな理由で……そんな下らない理由で国を裏切ったというのか!

愕然と、した。
魂が抜けたように項垂れる彼を無理矢理起こし、猿比古は女のように細い身体を眺めては満足気に口元を歪ませる。

「愛してるよ、美咲」

だから……一つになろう。

深い影が美咲を覆う。少なくとも自分の抱くイメージとはかけ離れた友人が、自分を押し倒しているのだ。

認めたく……ねぇ。

群青の夜、軍人の赤き魂は呑まれて消えた。



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兎角様に書いて頂きましたあぁあああ!!
イラストで言ってた軍服猿美です!!

猿比古の執着と猿美のすれ違いッぷりが最高過ぎる....!!(*^^*)

兎角様本当にありがとうございました!!




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