★Text

□百年の酔いも醒める程
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★リクエスト★

※美咲総受け
※キャラ崩壊注意


「らから!!尊さんは一番に格好良いんだって言ってんだろ!!////」
「はい、解っていますよ」
「解ってねぇっ!!////」

Bar吠舞羅に響く八田の声。
舌足らずに叫ぶ八田の手元には、まだ少し残りのあるカクテルが光っていた。

そんな八田の会話の相手を務めているのは、肉薄な笑みを浮かべる宗像。

「周防は一番に格好良いし、君は周防の事が大好きなんですよね?」
「そーだ!」
「それで構わないので、それ以上に私の事を愛して下さい」
「はぁあああ!?頭沸いてんのかテメェ!!////」

宗像はにこやかな笑みを浮かべると、楽しげに八田の相手をする。
一方八田は頬を真っ赤にして怒鳴っていた。

その様子を、マスター草薙が少し困り顔で見つめる。

「....あのお、そこら辺にしといて下さい」

草薙は様子を伺うように目を細めると、何を考えているのか解り辛い青の王に声を掛けた。
涼しげに言うものの、草薙の内心には妙に苦い思いが渦を巻く。

「八田ちゃん未成年やので....こっそりカクテル飲ませへんで下さいな」
「おや、失礼しました」

草薙のやんわりとした制止を余所に、宗像は爽やかに笑って八田の身体を抱き寄せた。

「八田君、いい子ですから、もうお酒はここまでに」
「えっ!?まだ俺全然飲めるっての!!」
「ダメですよ、私がマスターに叱られてしまいますからね」
「む....」

宗像は自分がこっそり八田に最初の一口を飲ませた事を棚に上げ、にっこりと笑ってみせる。
八田は宗像の言葉に渋々カクテルを手放した。

「そう、いい子ですね」
「....べ、別にお前に言われたからじゃねーかりゃな////」

素直な八田に宗像は笑みを深める。
宗像が優しく八田の頭を撫でると、八田は擽ったそうに身を竦めた。

(まるで飼い猫やないか....)

宗像に頭を撫でられ、八田が少し大人しくなる。
その様子に一層草薙の内心には黒い靄が立ちこめた。

草薙としては一刻も早くこの奇妙な客人には巣に帰って欲しい所である。
草薙は先程から、宗像が酔った八田を何度も口説いているのを見ていた。

「....」

草薙は沈黙しながらも、静かに宗像礼司に視線を送る。
宗像は恐らくそれに気付きながらも、腕の中の八田から視線を逸らしはしなかった。

両者の間に静かに火花が散る。

しかし取り合われている当人である八田には二人の冷戦など何処吹く風。
不意に沈黙を破って席を立った。

「どうしました?」

八田の急な行動に宗像は声を掛ける。
草薙も八田の言葉を待って視線を向けた。

「ん、俺....今日は帰る。も、眠いし」

見ると、八田の顔は先程よりも酒が回ったのか益々真っ赤になっている。
足取りもおぼつかない様子だった。

「そうですか。なら私が家まで送りましょう」

すかさず宗像はそう言うと、颯爽と自身も席を立つ。
その様子に草薙は瞬間眉根を寄せた。

それから直ぐに普段通りの笑顔を装うと、にこやかに言う。

「いやいや、そないなの悪い。八田ちゃん、今日はここに泊まっていき」

草薙の言葉に、今度は宗像が内心で舌打った。

(どうにも、邪魔をしてきますね....)
(....ええ加減諦めろ)

両者の心中が交錯し、場に緊張した空気が張りつめる。

そんな中、後ろから鎌本が小さく八田に声を掛けた。

「八田さん、俺が送るっすよ」

その言葉に、草薙と宗像の二人ははっと鎌本に視線を送る。
鎌本は身に針を受ける思いでその視線を受け止めながらも、こそこそと八田の腕を引いた。

「....そうやな、鎌本。宜しうな」

その様子に草薙は漸くはっと我に返ってにこやかに言う。
草薙的には、大切な八田を宗像から守れればそれでいいのだ。

決して一緒にBarに泊まってあれやこれやする事が彼の目標ではない。

「....仕方ないですね」

宗像も情勢が不利になったのを感じるとそっと言ってのけた。
しかし視線は蛇のように鎌本を見つめ続けている。

鎌本は生きた心地がしなかったが、野獣から敬愛する八田を守りきった事に一抹の安心を感じて息を吐いた。

「....じゃ、俺らもう行きますね」

小さく呟くと、逃げるように八田の手を引いて店から退散する。

退店していく最中、八田は振り返って小さく手を振った。

「じゃ、また明日っすー草薙さん!」
「おう、"また明日"な!」

八田の言葉に、草薙は内心で勝ったとばかりに心を躍らせる。
そう、草薙は"また明日"八田と会える。

が、宗像はそうもいくまい。

(ふ....八田ちゃん、可愛え奴....)

草薙は二人のグラスを手に取ると、淡く笑みを浮かべた。

一方宗像は、それでもめげずに八田に言葉を掛ける。

「八田君、私との交際も真剣に考えといて下さいね!」
「ねぇよ!」

八田は宗像の言葉を一蹴し、ぷいと向き直って店を後にした。

後に残った宗像は一人淡く唇を噛み締めて呟く。

「諦めません」
「....さっさと諦めろ」

草薙は宗像の言葉に小さく自身の言葉を重ねると、宗像と静かに睨み合った。


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一方その頃八田達は、暗い夜道で本日最大の敵と対峙していた。

Barから出て道を曲がると直ぐ、非公式八田ファンクラブの会員No.1こと伏見猿比古が八田を待ち伏せしていたのだ。

「みぃ、さぁ、きぃ....!!」

伏見の恍惚とした声が暗い夜道に響き渡る。

「!!」
「....あ?しゃる....?」

伏見の登場に鎌本は身を固くし、八田は小さく酔い潰れた思考で反応を示した。

八田は赤くなった顔でゆらりと伏見を見つめる。
伏見にはその瞬間、八田が酔っているのだとすぐに解った。

(は、最高じゃねぇか....!!)

伏見はごくりと生唾を飲む。
今なら八田に、控えめに見積もっても性的悪戯位はし放題だと伏見は舌なめずりした。

「どうした美咲ぃ、今日は俺を見ても喰って掛かってこないんだなぁ?」

伏見はこの美味しい状況に上機嫌で言葉を繰る。

「さ、る....」

八田は小さく呟くと、目を伏せた。
同時に酔って赤く潤んだ瞳が伏見の欲を駆り立て、事態は刻一刻と悪化していく。

「は、美咲....今日も童貞丸出しな可愛さだなぁ....!!そんな赤い顔して、俺の事誘ってるんだろ....?」

伏見はいやらしい笑みを浮かべてそう言うと、硬直する鎌本の横に割り込んで八田の身体に触れた。
八田はピクリと身を震わせる。

しかし、普段とは違い猿の手を振り払いはしなかった。

「おいおい美咲ぃ....何で抵抗しねーの?もしかして触られて嬉しいのかぁ?」
「....」

「....や、八田さん?」

答えない八田に、鎌本は静かに焦りが募る。
正直自分が伏見相手に八田を守りきれる自信は無かった。

「....猿比古?」
「ん?なぁに美咲」

不意に、八田は口を開いて伏見の名を呼ぶ。
伏見は漸く美咲から反応を得られて破顔した。

「....猿、熱い////」

八田はそんな伏見に対し、想像以上にしおらしい声でそれだけ呟く。

八田の対応に、鎌本と伏見の両者は刹那硬直した。

「....や、八田さん....す、直ぐ家ですからね」
「美咲ぃいいい!!熱いのか?熱いなら俺が脱がしてやるよ!!」

瞬間の硬直の後、鎌本が危険を察知して八田を諫めようとすると、その言葉を掻き消すようにして伏見は叫ぶ。

伏見は鎌本を突き飛ばすと、八田を腕の中に抱きしめた。

「八田さん!!」
「?」

突き飛ばされた鎌本はヤバいと本能で感じ、背筋を凍らせる。
対し八田は酔っているのと、眠気で状況を上手く対処出来ず、ただ身を任せるばかりだった。

「は、美咲....////」

伏見は呟いて美咲の胸元に手を滑り込ませる。

「ん....ゃ」

伏見に胸元を愛撫され、八田は甘い声を上げた。

八田の胸の内には何処か甘い疼きが生まれ、八田は上目遣いに伏見を見上げる。
普段の八田なら、間違いなく伏見をぶっ飛ばして怒鳴りつける所だろう。

「っ....美咲っ!!!////」

伏見は八田の愛らしい瞳で見上げられ、理性も限界に近かった。

「伏見....緊急抜刀....っ」

小さく呟くと、自身のズボンのチャックに手を掛ける。

その時だった。
伏見の視界の果てで赤い炎がごうと踊る。

「!?」

伏見が目を見開くと同時に、鎌本がはっと声を上げた。

「み、尊さん!!」

赤い炎の先には、赤髪の男が伏見達を見つめて立っている。
周防尊、八田の最も尊敬する人物である赤の王だった。

「!」

"ミコト"という音に、八田は過敏に反応し、はっと目を見開く。

「へ!?尊さん!!?////」

八田は酔いも醒めたという様子で声を上げた。

それから、自分に憎き裏切り者たる伏見猿比古が密着している事に気付いて再び声を上げる。

「あ、あ゛ァ!?猿比古!?」

八田は真っ赤になって伏見を押しのけると周防の元へ走り寄った。
周防は駆け寄ってきた八田に一瞥をくれると、ぽんとその頭を撫でてやる。

途端に八田はぱっと顔を輝かせた。

(ああ、八田さんまるで犬....)

鎌本は小さく内心で呟き、それから王たる周防の登場に心から感謝する。
周防が居れば、八田は間違いなく安全だ。

ほっと胸を撫で下ろす鎌本に対し、伏見は恨みがましく周防を睨み付ける。

「チッ....」

舌打つと、伏見は肩を震わせた。

(....さっきまでとろっとろに酔ってやがった癖に....!!)

今八田を再び見てみれば、もうすっかり何時も通りの様子で笑っている。

(....チッ、大好きな周防尊に逢えば酔いも醒めるってか)

伏見はギリと拳を握りしめた。
それから踵を返して元来た道を帰る。

「チッ....!!」

伏見の胸には鉛の様に重たく黒い苛立ちが渦巻き、伏見は再び舌打ちした。


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伏見が去った後八田は、周防と鎌本の二人に連れられて無事に家まで送り届けられた。
八田は大人しく付いて来はしたが、家に着くと不思議そうに尋ねる。

「そういや、何で俺送られてんだ?」

そんな呑気な事を言う危機感の無い八田に、鎌本は小さく溜息を吐いた。

(アンタ、自分がどんだけ沢山の男に狙われてるか....全然自覚ないんすね)

鎌本は胸の内で呟くと、がっくり項垂れる。
周防は八田の言葉には返答せず、静かに八田の頭をわしゃりと撫でた。

それから低い声で八田に言う。

「八田」
「っ!?は、ハイっ!?////」
「....もう、酒は飲むんじゃねぇ」

周防に言われ、八田はぴくりと震えた後、こくこくと頷いた。
正直本人の気付かぬ内に宗像に一口目を飲まされたので、八田自身酒を飲んだ記憶は曖昧なものだったが。

「....」

八田が頷くと、周防は小さく口元に笑みを浮かべた。
それから優しく八田の頭を撫でてやる。

その様子を見ていた鎌本は思わず和んで微笑んだ。

(尊さんにこんな甘ったるい顔させられんの、八田さん位だよな....)

心中で呟き、小さく笑い声を漏らす。

(いや、それを言うなら八田さんにあんな可愛い顔させられんの、尊さん位だな....)

断じて、猿じゃない。
猿であって堪るか。

鎌本は一人ぶんぶんと首を振った。
その様子を周防と八田は不思議そうに見つめる。

それから周防と八田が二人して首を傾げるのを見て、鎌本は再び笑い声を上げた。

(大事な八田さんの事、皆も尊さんになら納得して任せられるだろう)

猿以外。
鎌本は心中で再び呟いて、大事な八田の居る幸せな情景に目を細めた。


-fin-


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リア友からのリクエストです。
リクエストありがとうございました!

色々混乱した文ですみませんorz

要するに美咲可愛いよ美咲と言いたいだけです。
欲望の塊の様な話を書いてしまいました←

猿美....って聞いてた筈なのに何か尊美か鎌美っぽく終わってしまったのでちょっとだけ追加です。

おまけ→



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