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□愛し子の悪夢01
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※吠舞羅時代の伏見視点
美咲はいつの間にか大人になった。
相変わらずチビで童貞なのは変わらない癖に。
美咲が吠舞羅のメンバーとして振る舞う度、俺の心は鈍く軋んだ。
そしてそれ以上に、美咲が俺を吠舞羅のメンバーの一人として扱う時、耐え難い苛立ちが俺の中に募っていった。
俺はその感情をどうする事も出来なくて、苦い心の湖に深く溺れてしまった。
「美咲」
「あ?何だよ猿」
草薙さんのバーから二人で帰る途中、俺はたまらず美咲に声を掛ける。
美咲はきょとんとして俺を見上げた。
「今日、俺ん家泊まらない?」
静かに彼に言うと、美咲は一瞬目を瞬かせ、そして直ぐに満面の笑みを浮かべる。
「おー、いいな!夜通しゲームしよーぜ!!」
「....ゲーム、ね」
俺は復唱すると、美咲に向かって薄く笑って見せた。
けれど俺の心の内側には、エゴイスティックな欲がぐるぐると渦を巻く。
(無邪気なもんだな)
俺は微笑みながらも、内心で安易な彼を軽く嘲笑した。
俺が何を考えてるか何て、美咲には何一つ解ってないんだろうな。
だからこそ、俺にこんなに綺麗な笑顔を向けてくれるのだろうけど。
心の中で、錆び付いた声が反響した。
(美咲、俺を受け入れてよ)
今夜、俺は美咲を犯す。
そして美咲を俺だけのものにする。
そう思って、美咲を家に誘ったのだ。
自分でもどうして突然そんな事をしようと思ったのかよく分からないけれど、もう堪えようがなかった。
そうしなければ、俺は自身の焦燥に焼け焦がされてしまう気がした。
「おい猿!何ぼーっとしてんだよ?」
胸の奥底の鋭い牙を研ぐ俺に、美咲が脳天気な声を掛ける。
俺は傍らの美咲に視線を移すと、軽く舌打ちした。
可愛さ余って憎さ百倍と言おうか。
あんまり無邪気なのも妙に忌々しい。
「あ!?おい猿てめぇ何舌打ちしてんだ!!」
「別に」
俺の理不尽な反応に美咲は声を荒げた。
まぁ、美咲の性格からして当然だな。
(あーあ、可哀想な美咲)
俺は胸中で呟いて、目を伏せる。
罪悪感と、妙な興奮が胸に残った。
(訳も分からず俺に処女奪われちゃうなんてな)
そこまで思考が及ぶと、自然と口角が上がる。
(あぁ、何かいいな、ソレ)
美咲が俺のせいで、すっごく可哀想な目に遭うんだ。
(ゾクゾクする)
俺は美咲に見えないように顔を背けると、嘗てない感情に唇を歪ませた。
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「はい、美咲」
「ん、サンキュー」
俺は美咲を自室に招き入れるとにこやかにココアを手渡した。
美咲は躊躇い無くそれを受け取ると、直ぐに口を付けてココアを啜る。
そう、媚薬入りのココアを。
この媚薬は何時か美咲に呑ませようと悪戯心から通販で買った奴だ。
ちょっと変な気分になっちゃった美咲をからかってやろうという位のほんの可愛い悪戯に使うつもりだった。
けしてその後彼を犯し抜く事を目的に買ったものではない。
(それが、こんな事になるなんてな)
俺は胸中で薄く笑いながら、美咲の反応を待った。
「ん?何か変な味しねぇ?」
不意に、美咲が呟く。
怪訝そうな顔をしてカップを見つめる仕草が何か可愛い。
「これ、何時もと違くね?」
(なかなか鋭い....)
美咲が何やら物申すので、俺は適当に彼をあしらってやる事にした。
「何美咲?砂糖いーっぱい入れたんだけど....美咲にはまだまだ苦かった?流石美咲子供舌」
「あぁ!?何だとクソ猿!!?」
軽く煽ってやれば直ぐに乗っかってくる美咲。
単純な美咲のことだから、もう違和感なんてどうでも良くなってる筈だ。
美咲は俺を睨み付けると、案の定残っていたココアをぐっと飲み干す。
ほらね、もう単純。
「猿....てめぇ何にやにやして....っ」
俺の嘲笑は顔に出てたみたいで、美咲は不機嫌そうに俺の襟首をぐっと掴んだ。
そして低い声で不平を言いかけて、ぴたりと泊まる。
美咲の顔にはありありと困惑が浮かんでいた。
(来た!)
俺は美咲の顔に困惑が浮かんでいるのを見て内心で歓声を上げる。
「っ猿....何だよ、コレ....!?」
美咲は鋭く俺を睨みながら、震える声でそう言った。
頬が少し赤い。
よく見ると、手が小刻みに震えている。
「....何だと思う?....美咲ぃ」
俺は口角を歪めて美咲に顔を近づけた。
「猿....」
美咲は憎々しげに俺を見つめる。
何かされたのは解って死ぬほどむかつくけど、媚薬も効いちゃってるから上手く怒れない、ってそんな感じ。
「媚薬だよ」
俺は美咲をそっと床に押し倒しながら囁いた。
俺の言葉に、美咲は目を見開く。
「は、びやく....?」
呆然とした声で俺の言葉をなぞる。
美咲の驚く顔、可愛い。
「そ、媚薬。美咲が初めてでも気持ち良くなれるようにね」
「....?」
美咲は目を瞬いて俺の顔を怪訝そうに眺めていた。
まさか、まだ理解できないの?
「美咲は今から、俺のでぐっちゃぐちゃに犯されるんだよ」
「は!?クソ猿テメェ何言っ....っひぁ!!」
俺はなじる美咲を無視して、彼の太股に手を這わせた。
それに呼応し、美咲は嬌声を上げて過敏に身体を踊らせる。
「ほらな、感じてるじゃねぇか、美咲.....」
「.....っ!!////」
美咲は羞恥からか怒りからか顔を真っ赤にして俺を睨み付けた。
(エロい面)
俺は必死の形相で睨み付けてくる美咲に自然と口角が上がる。
「は、意外と....淫乱なんじゃねぇの」
「っクソ猿....テメェ....!!」
俺は言葉で美咲を辱しめながら、美咲のズボンのチャックを降ろした。
俺の行動に美咲はびくりと震えると、弱々しく抵抗する。
多分、これでも全力で暴れてるんだろう。
けど、力が入らないみたいだ。
美咲は悔しそうに唇を噛み締める。
上目遣いで俺を睨み付ける仕草に、俺の理性は完全に壊れた。
「美咲ぃ....良い、最高だ....」
俺はゴクリと生唾を飲む。
美咲の仕草一つ一つが、俺の心を昂らせた。
何て、官能的なんだろう。
「猿っ、テメェ止めやがれ....っひぅ!!」
美咲が口汚く罵るので、少しだけ彼の密壺を刺激してやる。
それだけで、美咲はトロリとした甘い声を上げ、快感に耐えるように目を細めた。
ヤバい、止まらない。
「は、美咲っ....」
「っあ、ふ....猿っ」
限界だった。
俺はろくに抵抗も出来ない美咲から無理矢理下着を剥ぎ取る。
そして性急にそこを指で弄り回した。
「っあぁ....!!////」
美咲から甘い声が上がる。
「気持ちいい?美咲?」
「気持ち良いわけねっ....だろぉ....!!」
堪らず尋ねると、美咲は目に一杯涙を貯めながら、ぶんぶん頭を左右に振り乱す。
(その割りには随分腰が揺れてんなぁ....美咲ぃ)
説得力皆無。
俺は美咲の密壺から指を引き抜くと、入れ替えで自身をひたりと宛がった。
「っ!?////」
美咲は俺のイチモツを見て、益々顔を真っ赤に染め上げる。
声も出ないのか、ぱくぱく口を震わせながら、俺の顔とソレとで視線を往復させた。
「何、誘ってんの美咲?」
「っんなわけ.....っ!!」
美咲の瞳から涙が一滴ほろりと滴った。
「っねぇ....だろ....!!」
仕舞いには嗚咽が聞こえてくる。
何も泣くことねぇだろ。
どうしてそこまで的確に俺を煽るんだろうな、美咲は。
俺は美咲の密壺に自身を差し入れた。
「っあああ!?」
美咲が甲高い悲鳴を上げる。
「痛ぇクソ猿抜けっ!!」
痛みでちょっと覚醒したみたいだ。
美咲の眼光が再び鋭くなる。
「はは、無理」
俺は美咲の言葉を一蹴すると、唇を歪めた。
「美咲の中、すっげぇ気持ちいい....」
「っ!!」
俺がそう言うと、再び美咲の表情が歪む。
俺は浅く吐息を吐くと、美咲の髪をそっと撫でた。
「動くぞ」
小さく呟いて、美咲の細い身体に腰を打ち付ける。
「えっ、猿っあああっ!!」
美咲はまた嬌声を上げた。甘い声が、彼の感じている快感を伝える。
「猿、ダメ.....可笑しくなる――――っ!!」
美咲の目尻から再び涙が溢れた。
「っ美咲....!」
美咲の身体が、俺のをきゅうきゅう締め付けてくる。
まるで、俺が欲しくて堪らないって言ってるみたいだ。
「はっ、美咲ぃ....!!」
今、美咲は俺のものだ。
「猿、も、ダメっ!!俺.....イっ、ぅ!!」
見ると、美咲はもう限界間近の様。
「一緒にイこうぜ....美咲ぃ.....」
俺は愛しい身体を抱き寄せた。
美咲も柔く俺の身体に腕を回す。
あぁ、幸せ。
今余りに美咲が愛しくて泣きそうになった。
俺は美咲を強く抱きしめ、その唇にキスをした。
「んぅっ.....////」
俺は愛しい美咲を抱き締めながら、彼の中に性を放った。
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「美咲」
俺は行為に疲れて気絶した美咲の頬をそっと撫でる。
騙すように無理矢理身体を奪ってしまった。
俺は隣に眠る愛しい人をそっと見つめると、唇を震わせる。
美咲の身体を手に入れて、美咲の初めての男になれて.....それは本当に嬉しいのに。
俺の心には一抹の寂しさが宿っていた。
(美咲)
俺、間違えたのかな。
俺がそっと美咲の髪に手を絡めると、美咲は小さく呻いて、寝返りを打った。
そして、小さく微笑んで幸せそうに呟く。
「ん、みこと....さん」
瞬間、頭の中が真っ白になった。
(美咲....)
そんなに、周防尊が好きなのか?
(手に入らない)
俺は胸中で切なく声を反響させる。
「美咲....」
美咲の心が....手に入らない。
いくら身体を重ねても、心は、そこに無かったんだ。
俺は愕然として、美咲から手を退けた。
幸せそうに寝てる美咲。
周防尊の名を寝言でよんで、幸せそうな面してる美咲。
(なぁ、美咲....尊さんの夢見てんの....?)
止めろよ、美咲。
お前は俺の事だけ見てれば良いのに。
俺は再び美咲に視線を戻し、そしてその幸せそうな顔にぎゅっと心臓を掴まれた様な思いになる。
朝起きたら、美咲は俺に犯された事を思い出すのだろう。
そして
(そして―――?)
俺は今更になって自身の幼稚さに気付いた。
―――美咲は、俺の事を嫌いになるのかも知れない。
目頭が熱くなって、俺は俯いた。
それから、静かに美咲の唇にキスをする。
(ほら、目ぇ覚ませよ美咲ぃ)
触れるだけの、御子様向けの軽いキス。
童貞の美咲相手だから。
もう、処女じゃないけど。
俺は無理に微笑んだ。
頬に滴が伝う。
(そしたら、今度は美咲....お前が俺を起こしてくれよ)
どう足掻いたって美咲が俺を愛してくれない世界―――
永遠に続くとも知れない、この悪夢から。