☆Text-Don't touch me !-
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「み・・・尊さん!」
宗像との気持ち悪い遭遇の後である。八田はいつも以上に、周防尊という存在を何物にも代えがたく感じた。例え彼が安売りの靴下の前で悩みながらうろうろしていたとしても、である。
「うをっ!?」
クランズマンに、やや威厳に欠ける場面を見せてしまった周防は、微妙に気まずい気持ちだった。まあ仕方ねぇかと、平静を装い答えた。
「八田か。」
「尊さんも来てたんすか!今日はセールっすね!」
安売り靴下の気まずさなんて、一瞬でどうでも良くなった。
(八田は屈託が無いつーか、良いよな。)
「知ってて来たのか!?お前、意外としっかりしてんのな。」
「いや、俺も知らなかったんですよ」
周防は苦笑いしながら、八田の背中あたりを軽く叩いた。
普段なら照れながら心の底から屈託なく笑う八田だが、今日のこの瞬間は、そうはいかない。
(やべぇ、下着着てないの忘れてた!)
憧れの人の前で、否が応にも羞恥心が煽られた。
少しごつい、でも暖かい手が、背中にどん、と触れて、耳まで紅くなってしまった。
尊さんの前でこのままではいけないと、彼がふっ、と息を吐き、靴下を検分し始めた瞬間、目の前のパンツと下着数着をひっ掴むと、レジへと急いだ。
周防はもう一度八田の方を振り返った。誰も居なかった。
「忙しねぇなあ」
何か様子が違う気がした。いつもなら割りとベタベタ張り付いて困るくらいなのに。急用でもあったのだろうか?
独り取り残された赤の王は、柄にもなく、寂しさを感じた。