女神の采配
□2個目
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真雪がサッカー棟を訪れなかった次の日。
雷門中の2学年は転入生の話題で持ちきりだ。
朝練を終えた神童や霧野もその話題に混ざった。
「へー、転入生か。
どんな奴なんだ?」
「イタリアからの帰国子女らしいぞ。んで女子!」
女子だぞ女子!と興奮気味に話してくるクラスメイトに神童も霧野も苦笑いだ。
チャイムと同時にざわついた教室に担任が入ってくる。
「ほら席に着けー。
すでに知ってるみたいだが、今日からこのクラスに転入生が来ることになった。
入っていいぞ」
担任が呼ぶと彼女は扉を開けて足を踏み入れた。
入ってきた少女に神童と霧野は目を見開いた。
「初めまして。神崎真雪と言います。5年ほどイタリアに住んでいましたが、日本語に不自由はありません。
好きなものは音楽とサッカーで、嫌いなものは暗記です。
よろしくお願いします」
最後は微笑んで頭を下げると盛大な拍手が起こった。
真雪は担任に促され、空いていた後ろの席へと向かう。
「神童、あの子……」
「ああ。
2年だったんだな……」
HRが終わり真雪の周りに人垣ができた。
お決まりの質問攻めにあっているらしい。
最初は笑って端から質問に答えていたが、さすがにうんざりしたのか途中から苦笑に変わっていた。
始業のチャイムでようやく人垣が消え、先生が入ってくる。
疲れたようにため息を吐いて、すぐに教科書を開いた。
早速友達もできたらしく、昼食は女子数名と仲良く食べていた。
いつものごとく霧野は神童と食べていたが、何やら神童がちらちらと真雪に視線を送っていた。分かりやすい神童の行動に霧野は声を潜めて聞いた。
「気になるのか」
「あ、いや、気になるというか、その……
ほら、サッカー上手かったし、円堂監督とも仲がよかったし、その、小さくて、かわいいというか……」
「(漸くこいつにも春が来るかな。
つうか墓穴掘ったぞ今)
そうか。後で話しかけてきたらどうだ」
「あ、ああ」