No.6
□ぼくたち受験生!
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「おい紫苑。この前の模試の結果、どうだった?」
ぼくの部屋で読書をしていたネズミが急に話し掛けてきた。
高3の冬休み。
ぼくたちは今、受験勉強におわれている。
いや、ネズミは読書をしているから、焦って勉強してるのはぼくだけなのかもしれないんだけど…。
「判定はAだったよ。だけど、国語がどうしてものびないんだ。」
そう言って、ぼくは今取り組んでいる問題集をネズミに見せる。
「評論文はちゃんと出来るんだけど…こういう漢文とかが、なかなか難しくて。」
「貸してみろ。」
言われた通り、ネズミに問題集を渡す。
きれいな灰色の瞳が文章をおいかけ、すぐに顔をあげた。
「あんた、これのどこが難しいんだ?すごく簡単なんだけど。」
「簡単…?」
ネズミがフッとバカにするように笑い、本文を指差した。
「ほら、この言葉とか。おれがいつも言ってることじゃないか。うん。いい言葉だ。」
「…きみがこんなことを言っているの、ぼくは聞いたことないけど。」
「それにここ。この漢字が出てきたときは反語になるから…って、紫苑は暗記は得意だろ?きまりさえ覚えればこんなの簡単じゃないか。」
理解できない、といった表情でネズミがぼくを見てくる。
…なんだかすごく屈辱的な気分だ。
「確かに、きまりは全部覚えているから、訳す問題なら出来るんだ。」
「は?じゃあ問題ないだろ?」
「…訳せても……読解が出来ないんだよ…。」
ネズミがポカンとしている。
あーもう、だから…!!
「訳せても、意味が理解できないんだよ!分かったと思ってマークしても、いつもバツだし…!」
「あぁ…、たしかにあんたの脳ミソは、そういう面においてはチンパンジーなみだったな。」
やっと納得したようで、ネズミが頷く。
なんだか恥ずかしいし、くやしい。
なんでぼくはネズミに哀れんだ目を向けられなきゃならないんだ。
ぼくに苦手があるように、ネズミにだって苦手な科目はあるじゃないか!!
そうだ。
いいこと思いついた。
ネズミ、笑っていられるのは今のうちだよ。
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