No.6
□きみの隣で
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ネズミは走っていた。
砂漠の上を、風よりも速く。
ただひとつの目的に向かって。
「紫苑…っ!」
ネズミの嫌な予感はよく当たる。
紫苑の声が聞こえたと感じた時から、ネズミの脳裏には嫌な予感が貼り付いて離れなかったのだ。
「頼むから無事でいてくれ…」
休まずに走り続けて、いったいどれだけの日が過ぎたのだろう。
ネズミはやっとのことでNO.6への帰還を果たした。
NO.6は、いたって平和だった。
内乱などが起こっている様子も、伝染病が流行っている様子も感じない。
(NO.6には何も起こっていない。紫苑の身に何かあったと感じたのは、おれの思い違いだったのか?)
速度を緩めて辺りを見回したネズミは、フッと一息ついた後、幾年かぶりに自分の住みかへと戻ることにした。
(何をやっているんだおれは。勝手に焦ってこんなところに戻って来るなんて。一晩休んだら紫苑に会ってしまう前にNO.6を出よう。会ったら最後、ここから離れられなくなってしまう。)
なるべく目立たないように移動し、懐かしい住居へとたどり着くと、それまで静かにネズミの服の中に入っていた小ネズミたちが、いきなり騒ぎはじめた。
「おい、どうし……え?し、おん?」
小ネズミたちの視線の先、ネズミのベッドには横たわるひとつの影。
それは他でもない、紫苑だった。
(つづく)