No.6

□きみの隣で
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ふと、紫苑に呼ばれた気がしてネズミは歩みを止めた。


ここは砂漠のど真ん中。

ジリジリと焼き付いてくる太陽と吹き荒れる砂嵐のなかで歩みを止めることは、命取りになってしまいかねない行動だ。


チチッ


「あぁ、分かってる。」


ハムレットに急かされ、ネズミは歩みを再開した。






だが、後ろが―NO.6にいる紫苑のことが気になってしまい、歩みのペースをあげることが出来ない。


(ばかばかしい。NO.6は2つ山を越えた所にあるんだ。紫苑の声が聞こえるはずがないじゃないか。それに、聞こえたとしてもおれはこの道を選んだんだ。紫苑から離れて、旅に出る道を。)



ネズミは今後もNO.6に戻る気はなかった。

紫苑と再会の約束は交わしたが、紫苑と再会してしまったら、もう紫苑から離れられる自信がなかったからだ。




紫苑から離れられなくなってしまったら――

考えるだけで怖い。


離れられないとはつまり、紫苑なしでは生きられないということだ。



そうなってしまったらおれは…

おれでなくなってしまう。





チチチッ!


「あぁもう分かったって言ってるだろ。」


今度はクラバットに急かされ、ネズミは考えを振り払い無心で地面を蹴った。



(つづく)
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