さよなら私の愛した世界(短編)

□任務のときは
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「そろそろ見えてきたぜ、うん」


前方に目を凝らした少年がそう言うなり、その後方でのそりと何かが動いた。







「やっとか」

「殲滅からの宝探しですっけ?めんどくさそー」

「何なら前半と後半で分担するか?後半は任せた」


くく、と笑った巨体の男に、小柄な少女は冗談じゃないと顔をしかめる。


「それってサソリさんのいいとこ取りじゃないですか」

「適材適所っつーんだよ」

「ターゲットがチャクラ纏ってても、無機物感知は難しいんですからね!? それに私だって殲滅ぐらい出来ますよ!」

「ぐずぐずしてると置いてくぞ」


むむ、と唇を尖らせた少女に、男――サソリは背を向ける。

先程までは点だった集落が、今や目前にまで迫っていた。

地面に巨大な影を映しながら進む鳥の背中で、三人は集落へと目を向ける。


「じゃ、気合い入れていきますか」


すっと目を細めて少女は笑った。

先程までの彼女はどこへやら。鋭く光る目に、隙のない佇まい。

がらりと変わった雰囲気に、少年は改めて少女を見つめる。


「トバリって、」

「…ん?」

「任務の時はずいぶんと雰囲気変わるよな、うん」


トバリと呼ばれた少女が少年に向き直る。

きょとんと少年を見るその目つきに、先程までの鋭さはない。

組織の中ではもはや常識となりつつあるそれに、しかしいつまで経っても少年が慣れることはなかった。


「いや…まぁ、そりゃ任務の時はね。仮にも“S級犯罪者”なんだから、ちゃんとそういう顔しないといけないでしょ」

「…結構ノリいいのな」

「当たり前でしょ。どうせなら楽しまなきゃね」


彼女が任務の時にだけ被る仮面の意味を知らない少年は、得意げな顔で笑ったトバリに口を噤んだ。

大きいとも小さいとも言えない静かな集落の上で、巨鳥が旋回を始める。


「サソリさんだってこういうノリ、満更でもないですよね」

「お前と一緒にするんじゃねェ」

「またまたぁ。意地張ってると私一人でやっちゃいますよー」


目標地点としていた広場は既に真下だった。

チッ、と隠すことなく舌打ちをした後、サソリはその巨体をぎしりと軋ませる。


「…乗ってやるのは今回だけだぜ」

「それもう今回で三回目ですよ」

「黙れ」


飛び降りたサソリの後を追うように、トバリは巨鳥の背から身を投げ出した。

みるみるうちに遠ざかっていく二人の影を、少年は一人、鳥の上から見下ろす。



やがて悲鳴に混じって聞こえてくる破壊音。

それを確認してから、少年はようやく腰の袋へと両手を突っ込んだ。

ふて腐れたように僅かに尖った唇から、小さなため息が漏れる。





「んで、今日も結局、オイラは上から落とすだけなのな」


鳥の背で、今日も少年は独りごちる。















「――喝!!」

「デイダラ!! 俺の方には落としてくんじゃねェ!! 落とすならトバリの方にしろ!!」

「いや私もできれば落としてほしくないです」





――――――――――――――――――

芸コン+ヒロインの雰囲気を出したくて。
一番後輩にあたるデイダラをサソリさんとヒロインで引きずり回せばいいと思います。

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