BOOK
□home,home,room
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「相っ変わらず何もないわね」
「五月蝿い」
夏目は今俺の部屋にいる。
まだ明るい、日曜日。
こうして来たのも三回目くらいだろうか。
なんの違和感もなく呼べるような関係になってからはや二ヶ月、夏目が俺の部屋いるという事実がただ嬉しい。
夏目はすぐにベッドに腰掛けた。
初めて来た時からずっとここが夏目の定位置だ。
俺としてはなんとも押し倒しやすそうな場所に座って欲しくはないが、仕方がない。
ちなみに夏目を呼ぶ日は必ず親がいない。
夏目はそんな俺の意も介さずクッションを抱き締めながら、ごろごろする。
そして思いついたように
「テレビつけて」
と言った。
俺もベッドに腰掛けながらリモコンをとる。特に面白い番組は入っておらず、仕方なく録っておいた映画を観ることにした。
勿論、アニメである。
俺にしては珍しく幼女が出ていない映画でアクションものだった。
夏目も食い入るように見ている。
…正確にはこいつが見ているのは主人公(♂)とその仲間(♂)だが。
でも手に汗握って見ている姿は可愛らしく、それだけで俺は満足した。
うとうとと眠気が襲ってくる。何回も見ているせいで先の展開がわかっているし、何より隣にいる夏目の香りとか、体温とかでどうしようもないくらい安心してしまった。
はっと目が覚める。寝てしまったのだろうか。
まだ完全に意識が戻っていない頭を動かすと、違和感を感じる。明らかにベッドとは違う感触。
温かくて、柔らかくて。
そしてこの香りは―。
今度こそ目が覚めた。
俺は夏目の膝の上で寝ていたのだ。
窓を見ると日が暮れていて、たった時間を物語っている。
「…おい、夏目」
「…え?ああ、起きた?」
どうやら夏目も寝ていたらしい。夏目らしくないおっとりとした口調で受け答える。
どっちかというと起きてないのは夏目のほうで、目もとろんとしている。
お前、いつからと聞こうとした瞬間、夏目がそれを遮った。
「…秀の寝顔、可愛かった」
「!」
びっくりしながら体を起こそうとするが夏目の手がそれを制す。
さらさらと俺の髪を梳く。優しく、何度も何度も。少し、くすぐったい。
そして俺の前髪をかきあげると
ちゅっ。
「―っ!!!」
俺の額にキスをした。
突然の事態に頭がついてこない。
今わかることはこいつが完全に寝ぼけていること。
夏目は満足そうに笑い、体の力を抜く。夏目の体が俺の頭におりてきて、柔らかく、重い感触が顔にかぶさり、窒息しそうになる。
必死で、だがあまり触らないようになんとか抜け出す。
起こして問いただそうとして体をこっちに向けると、そのまま体が倒れ込んでくる。
今の状況をわかりやすく説明すると
・ベッドの上に俺と夏目(高校生)
・俺の体の上に夏目
・夏目は寝ている
・先程夏目に額にキスをされる
・柔らかい、温かい
・家に誰もいない
これで、正気を保てというのだろうか。
引き剥がそうとするが、夏目の幸せそうな寝顔を見るとそんな気にもならない。夏目の寝息とか、たまに聞こえる
悩ましげな声が耳にかかる。
どんな生殺しだ、おい。
とりあえず起きた夏目をどうしてやろうかと考えながら、俺は目をつむった。
秀夏。お部屋デート。夏目さんが寝ぼけてこういうことしちゃえばいいと思う。
でもここで寝込みを襲わないのが秀の夏目さんへの愛情を物語っています。
タイトルに特に意味はないです笑
語呂が気に入っただけ。
…リクエストこんな感じで大丈夫でしょうか?
満足して頂けたら幸いです。
これからも宜しくお願い致します。