BOOK
□あと少し
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ヤンデレ娘からのラブレター騒動の後。
夏目はそれはもう楽しそうだった。
「やっぱり秀健って公式だったのね!」
俺は内心っていうか本当に舌打ちをした顔をしかめた。
こんなふうに言われる原因を作ったのは他でもない自分だから仕方がないといえば仕方がない。
だが、してほしくない反応に苛立っているのも事実。
言わなければ良かった、あんな台詞。
ラブレターの返事には好きな子がいると返した。
嘘ではない。
綺麗なさらさらとした茶色がかった黒髪と白い肌。
少しつりあがった目からは気の強さがうかがえる。
完全に状況を面白がっている顔が可愛いやら憎たらしいやらでなんとも言えない。
今、目の前にいるこの女が俺の好きな子。
俺のことなんて全く見てくれない女。
こいつの名前をそのままラブレターに書いても良かったのだが、何か起こってしまうのが怖かったので夏目の名前を書かずそのまま出した。
翌日。
ラブレターには魔法陣を用意してるから好きな子を教えてくれと書いていた。
名前を書かなかったのは正解だった。
ヤンデレ娘が海外留学するということで、半年は命が繋がることになったのだが、それは同時に半年後には好きな子を用意しなければいけないということになる。
勿論、それは夏目以外でなくてはならない。
そこでヘアピンである。
五月蝿いし俺の前からいなくなっても困らない。
それを告げるといつも以上に五月蝿くつっかかってきたが。
死角のない名案と思われたが一つ、問題が発生した。
それが夏目の反応である。