サカナさん
□ハウ・ワンダフル・ワールド
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空がこんなにも青いとか、道端に咲いている花が綺麗だとか、春の風がやけに心地好いとか。
(はじめて、気が付いた)
ハウ・ワンダフル・ワールド
「あの、」
ふと、気になったことを聞いてみた。
「どうして火神くんは、僕のことが好きなんですか」
僕の問いかけに、火神くんは目を丸めてキョトンとした。確かに、いきなりこんなことを聞かれて驚かないわけがない。
あぁ、どうしてこんなことを聞いたのだろう。別にこれといった答えが欲しいわけではない。本当に、本当になんとなく、火神くんの気持ちが気になっただけだ。
「え…なんでって…
なんでだ?」
「知りません」
聞かなければよかった。
とぼけたように笑ってる火神くんを見て、ちょっと後悔した。
いったい何を期待してたんだろう。
「だって、気付いたら好きになってたんだから仕方ねぇだろ」
「だから、そこが不思議なんです。どうしてこんな僕なんか……」
“普通は、好きにはならないでしょう?”
そう言おうとした瞬間、僕はぐいっと腕を引っ張られ、あっという間に火神くんに抱きしめられていた。
僕より何倍も大きい身体は、一瞬で僕を包み込む。
「ちょ、なんですかいきなり…」
「やっぱ好きだなぁ、って思った!」
身体を離して火神くんの顔を見上げると、火神くんは優しく微笑んだ後、僕の額に小さなキスをした。
「っ、なにしてるんですか、ばか…!」
「なっ!ばかって言うなよ」
こうやって僕はまた、君に心を捕まれて。
苦しくて、痛くて仕方ない。
でも、なんだかとても。
幸せだ。
「ほんと、なんでお前が好きなんだろうな。俺もわかんねぇよ」
「そうですか」
「でも絶対、お前じゃないとダメ」
空がこんなにも青いとか。
道端に咲いている花が綺麗だとか。
「お前は、どうして俺が好きなんだよ」
春の風がやけに心地好いとか。
「…わかりません。
けど、僕も火神くんじゃないと、ダメです」
「お前……なんか今日すげー可愛い」
「うるさいですよ」
君のことが、好きだとか。
(君と居る世界は、こんなにも世界は素晴らしい)
END