サカナさん

□ハウ・ワンダフル・ワールド
1ページ/1ページ


空がこんなにも青いとか、道端に咲いている花が綺麗だとか、春の風がやけに心地好いとか。
(はじめて、気が付いた)



ハウ・ワンダフル・ワールド



「あの、」

ふと、気になったことを聞いてみた。

「どうして火神くんは、僕のことが好きなんですか」

僕の問いかけに、火神くんは目を丸めてキョトンとした。確かに、いきなりこんなことを聞かれて驚かないわけがない。

あぁ、どうしてこんなことを聞いたのだろう。別にこれといった答えが欲しいわけではない。本当に、本当になんとなく、火神くんの気持ちが気になっただけだ。

「え…なんでって…

なんでだ?」

「知りません」

聞かなければよかった。
とぼけたように笑ってる火神くんを見て、ちょっと後悔した。

いったい何を期待してたんだろう。


「だって、気付いたら好きになってたんだから仕方ねぇだろ」
「だから、そこが不思議なんです。どうしてこんな僕なんか……」

“普通は、好きにはならないでしょう?”


そう言おうとした瞬間、僕はぐいっと腕を引っ張られ、あっという間に火神くんに抱きしめられていた。
僕より何倍も大きい身体は、一瞬で僕を包み込む。

「ちょ、なんですかいきなり…」
「やっぱ好きだなぁ、って思った!」

身体を離して火神くんの顔を見上げると、火神くんは優しく微笑んだ後、僕の額に小さなキスをした。

「っ、なにしてるんですか、ばか…!」
「なっ!ばかって言うなよ」


こうやって僕はまた、君に心を捕まれて。
苦しくて、痛くて仕方ない。

でも、なんだかとても。






幸せだ。



「ほんと、なんでお前が好きなんだろうな。俺もわかんねぇよ」
「そうですか」



「でも絶対、お前じゃないとダメ」





空がこんなにも青いとか。

道端に咲いている花が綺麗だとか。



「お前は、どうして俺が好きなんだよ」



春の風がやけに心地好いとか。



「…わかりません。

けど、僕も火神くんじゃないと、ダメです」


「お前……なんか今日すげー可愛い」
「うるさいですよ」



君のことが、好きだとか。





(君と居る世界は、こんなにも世界は素晴らしい)


END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ