サカナさん

□片思いの向こう側
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俺が「好きだ」なんて言ったら、君はどんな顔をするのかな。
(ねぇ、笑ってくれる?)



片思いの向こう側



友達以上、恋人未満。
そんな言葉が俺たちにはピッタリだ。男同士なんだから、そんなの当たり前なんだけど。

だけど、俺は日向が好きだ。もちろん、友達として、仲間としてじゃなく、恋愛感情として。
高校に入って日向への想いに気付いた。最初は好きな相手が男だということに戸惑いはあった。だけど、そんな迷いとは裏腹に、日向と同じ時間を過ごす度に日向を好きになっていった。自分でも不思議だった。可笑しいとも思った。でも俺は、どうしても自分の気持ちに嘘はつけなかったみたいだ。


もうずっと、そんな想いを隠したまま、

俺は日向の隣にいる。





「日向は、さ」
「あ?」

「俺のこと、好き?」




「…はぁ?」


残り一口だったパンを口に放り込み、“何言ってんだ急に”という目つきでこちらを見てきた。


「いや、ごめん急に。なんとなく聞いてみただけ」


笑って誤魔化して、動揺を隠すようにジュースを一口飲んだ。自然と口に出てしまった言葉で自分でも少し焦った。
俺は日向に何て言ってほしかったのかな。俺は日向に、どんな答えを求めていたんだろう。


「熱でもあんのか?」
「ないよ、いいから今の忘れてくれ」

日向はわざと目を合わせるように俺の顔を覗き込む。もう、今この場で自分の気持ちを打ち明けてしまおうか。“ずっと日向のことが好きだったんだ”って…
でも、やっぱりそんなことを言っていいはずがなくて、俺は今にも溢れ出しそうな気持ちと言葉を、残りあと少しだったジュースといっしょに、一気に飲み干した。

いっそ嫌いになってしまえば楽なのかもしれない。もし「好きだ」なんて言ったら、今の関係が壊れて、もう今までの二人には戻れなくなるかもしれない。そうなる前に、いっそ諦めてしまおう。こんなふうに、気持ちが綺麗に割り切ることができたらいいのに。

だけど。黙った俺を見て、日向は思いがけない一言を口にした。



「俺は、お前のこと好きだよ」

「…え?」


拍子を突かれて目を丸くした。

今、「好きだ」って言った?日向が俺に?何かの間違いではないのか。だって“好き”の種類なんてそんなのいくらでもある。俺と日向の“好き”がいっしょなんて、そんなこと。


「えっ、と…それはどういう…」
「知らねーよ」

俺の問いかけには答えようとしない日向の顔は明らかに真っ赤で。そんな顔されたら、期待してしまうから、こっちまで顔が熱くなった。

「…照れてんじゃねーよダアホ」
「日向も顔真っ赤だろ」
「うっせ」


日向は「ジュース買いに行くからついてこい!」とだけ乱暴に言い放って、足早に教室を出ていった。
ジュース、飲みたかったんだ。

「言ってくれればあげたのにな…」



空になったジュースの紙パックを握り締めて、駆け足で日向の後を追った。




俺たちはきっと、確実に近付いている。

いつか胸を張って自分の気持ちを伝えられる日が来たら、そのときはさっきの言葉の意味を教えてくれないかな?


END

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