サカナさん

□ネガティブな君に
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めずらしく沈んだ顔している木吉に、俺は少しイラッとした。理由がわからないからだ。話し掛けても無理に引きつった笑顔を見せる。何か悩んでんの、バレバレだっつーの。

「おい、お前さっきから何なんだよ」
「ん、何がだ?」
「だから!いつまでも情けねぇ顔してんじゃねぇよ!うぜぇ!」

「・・・え?俺、そんな顔してるか?」

これだからこいつは嫌なんだ。何を考えているか、さっぱり分かんねぇ。悩んだりすると、一人で抱え込む癖がある。こっちまで不安になるんだっつの。

「日向、知ってるか?」
「あ?」

苛ついた声で応えると、日向は静かに笑って言った。

「人の恋愛感情って、長くて4年くらいしか持続しないんだってさ。」

「・・・へぇ」


急に何を言い出すかと思えば、わけのわからない話。

「で?だから何でお前はそんな顔してるわけ?」

「・・・俺と日向もさ、いつかはそんな日が来るのかなぁ、とか思ったらさ。なんか悲しくなってきて、な」


━━━は?

俺と、お前が?4年経ったらもうバイバイだって?

なんだそれ、意味わかんねぇ。
(だから嫌なんだよ、お前なんか)


「つまんねぇこと気にしてんじゃねーよ、だあほ」

なんでお前はそう、勝手に一人で考えて苦しんで、そうやって一人で悲しんじゃうわけ?しかも、そんなわけのわかんねぇことを。

「お前は俺のこと好きなんだろ?」
「好きだよ」
「・・・いいか。一度しか言わねぇぞ」
「?」


「俺もお前が好きだ。この先何があっても」
「・・・っ、」

なんで俺がこんなこと。まったく、どこのアホが人の恋愛感情がどうのこうのなんて言ったんだ。何が4年しか続かないだ。

「それでいいだろ。んなもん、言わせときゃいいんだよ。俺は終わらせようとしてねぇし・・・



終わらせたくねぇよ。」

「日向・・・っ」



ヘラリと笑ってみせると、木吉は今にも泣き出しそうな顔で「ありがとな」って言った。
だからそんな情けねぇ顔すんなっての。こいつが一番わけわかんねぇんだよ。

ぎゅっと、優しく抱き着いてきた木吉の背中に、俺もゆっくりと手を回した。

「好きだよ日向」
「知ってる」
「ずっと、ずっと、好きだ」
「うっせー、だあほ」



すっげー嫌なヤツだけど、ずっと傍にいたいって思うのはたぶんこいつだけで。この手も、できるならずっと離したくねぇな・・・

なんて。


「・・・言ってやんねぇけど、」
「ん?何か言ったか?」
「別に」



こいつがまたバカみたいに一人で抱え込んで、ネガティブになったときに言ってやろうかな。


【ネガティブな君に】




-END-

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