サカナさん
□アイとコトバ
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◇◇◇
「真ちゃんはいつも肝心なときに言葉が足んねぇの!」
そう言うと真ちゃんは、決まっていつも目を逸らす。膨れっ面で。
わかってるよ?
素直になれないんだよね?心では思ってても、それを口には出せなくて。
ちゃんとわかってる。
けど。こんなときくらいは。
“おめでとう”の一言くらいくれたっていいんじゃない?
「ねぇねぇ、真ちゃん」
「なんなのだよ」
「べっつにー」
「言いたいことがあるなら言え」
そっちこそ、って反論したかったけど、不機嫌な顔をする真ちゃんが浮かんだから言わないようにした。
この人、もしかして俺の誕生日忘れてんじゃねぇの?
いや、恋人の誕生日を、普通忘れるか?
いや・・・真ちゃんならありえる、けど。逆に真ちゃんなら覚えていそうな気がするんだけど。
あー、なんか。モヤモヤする。
「高尾・・・」
「んー?」
「・・・おめでとう」
「・・・はっ!?」
なにそれなにそれ。
まさかのこのタイミングで?
ちょっと諦めかけてたこのタイミングで?
真ちゃん それさ。
「・・・なんか、ムカつく」
「なっ、むかつくとはなんなのだよ!」
「ムカつくもんはムカつくんだよ!」
「・・・嬉しく、ないのか・・・?」
ほんっと、調子狂う。
だって、いつだって、真ちゃんがくれるちっちゃな愛も、俺にとってはおっきな愛で。
なにもかもが愛おしくて仕方ない。
「嬉しいに決まってんじゃん・・・」
赤くなった顔を隠すために俯いて、小さな声で呟くと、真ちゃんはぎゅっと俺を抱きしめてくれた。普段はこんなこと、あんまりしてくれないのにな。
(今日はいつもより、あなたがあったかい)
「高尾、」
「・・・っ!」
名前を呼ばれて顔を上げた瞬間、真ちゃんと俺の唇が重なった。
その僅かな時間が、俺には時間が止まったかのように思えて。
一瞬頭が真っ白になって、何が起こったか分からなかったけど。
触れるだけのキスが終わり、唇が離れて、真ちゃんと目があった。急にお互い恥ずかしくなって一度は顔を逸らしたけど、
「真ちゃん・・・かっこいい」
なんて言ったら、くしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
「ねぇ真ちゃん。今のチューって、誕生日プレゼントってことでいいわけ?」
「まぁ、そんなところなのだよ・・・」
「真ちゃんって意外とキザなんだね」
「っ、お前・・・!」
言葉足らずでも、ちゃんと伝わってるよ?
でも、たまには。
「真ちゃん、好き。大好き。」
(あなたの言葉で聴きたいな)
「俺もお前が、 」
(ねぇ ほら、もっと)
(あなたの愛を伝えてよ)
-END-
Happy birthday to Kazunari Takao !!