サカナさん
□告白
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「…っあのさ…!」
思わず握ってしまった手から、緊張と焦りが伝わってしまいそうで怖かった。友情と愛情の境目は、どこにあるのかわからない。でも俺は単純に、黒子を独り占めしたいって思った。
「な、んですか…」
「いや……なんだろ?」
「こっちが聞いてるんです」
悪りぃ悪りぃ、と笑ってごまかすように謝ったけど、黒子はまだ怪訝そうな目でこちらを見ている。確かに、こんなのびっくりするに決まってる。
だって、今は学校の帰り道で、それも結構人通りの多い夜道の橋の上だ。こんな必死な顔で、いきなり手を握られて。いや、びっくりするだろ。
…つーか俺、すげぇ変な人じゃんかよ!
(どうすれば、いいんだ?)
「とりあえず、手を離してください」
「おっ、おう…」
言われた通り、さっきまでずっと握っていた手を離すと、自分の手が汗ばんでいて、もっと後悔した。恥ずかしさと後悔でもう何も言えなくて、ただ俯くことしかできなかった。しばらくの沈黙ができる。
でも、その沈黙を破ったのは、はぁっと大きな溜め息をついた黒子だった。
「………あの、」
「…はい」
「言いたいことあるなら言ってください」
「えっ、と……わっ、忘れた…」
「逃げないでください」
自分を真っ直ぐ見つめる水色の瞳に思わず吸い込まれそうだった。いつもなら冗談で終わるけど、今日の雰囲気は何だか少し違った。
拳をぎゅっと握り締めて、いつになく真面目な声で、伝えよう。素直にそう思った。(この想いは、もう止められそうにない)
「好きだ」
たった三文字が、どうして今までずっと言えなかったんだろう。
「・・・遅いですよ、火神くん。」
「・・・え?」
あまりに予想外の答えが返ってきて、気の抜けた声が出た。恐る恐る黒子の表情をうかがうと、さっきまでの真剣な表情ではなく、黒子は目を細めて優しく微笑んで、小さな声で呟いた。
「僕も、火神くんが好きです」
俺は、今まで伝えられなかった想いの分まで、
黒子を強く抱きしめた。
(曖昧だった僕らの関係も、)
(これから少しずつカタチにしていけたらいいよね)
二人で一緒に。
-END-