クジラさん
□夕暮れに痛みを残して
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報われなくて、悲しく俯いた彼の背に手を重ねる。
振り向いた彼は笑っていた。
何度も夢を追いかけてその度に挫折して。思い通りにならず憤っての繰り返し。
疲れた。そう一言漏らせば良いのに。
「もう良いんじゃない?」
彼は苦しそうに顔を歪めて、頷いた。
背中にあった手を、いつの間にか彼が掴んで立ち上がる。
歩いて。笑って。
キミ以外は誰も居ない道の上を二人で。
「今日が終わるな」
そう言うものだから。
明日も来るよと、彼を真似て笑ってみせた。
指先に残るものだけが、柔らかな朝を迎える。
そうあるように。
(夢を諦めてでも、愛しい人の隣へ)
終