奇跡と運命book

□森と男一人
1ページ/4ページ









この暗い場所に来て約5分。



私と理夢は、いくつか分かったことがある。


ここはどこかの森の中で、空に月が見えることで今は夜という事。







そして、




ヒュウゥゥゥゥ……





今はとても冷たい風が吹いていることが分かる。



【美咲…寒い…】


『と、とりあえず、風の当たりにくい木の後ろに行こう……』





温かい格好ならきっとこんな所にいても大丈夫だと思う。


でも私達の格好は全然違う。

半袖、膝までのズボン。



場違い過ぎると思う。






木の後ろに行くと少しだけ風が弱まった。


風に少しでも体温を奪われないように私は、結んでいた髪に手を伸ばし、ほどこうとした。

が、風によって髪が大変な事になるのは嫌なため私はその手を離した。





『はぁ……』

【美咲?どうかし――】






「そこにいたのか」











【『!!』】



突然、後ろから声が聞こえて私と理夢は目の前の木から声のした後ろの方へと振り返った。






「柊美咲と月野理夢だな」




足元までありそうな長い黒のコート、そしてつけたばかりと思われる長いタバコ。


コートは風ではためいていて、タバコの煙も風によって男の横を通り過ぎて行く。





顔は男の髪でよく見えない。




『っ……』



ドクドクと鳴る心臓がうるさい。

風の音が聞こえない。




『…っ……誰…です、か…?』





小さく震えた声で美咲は言った。



男は答えた。













「俺は、お前らをここに連れてきた者だ」









次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ