白き雪の結晶book

□料理
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真冬が来てから3日。
俺は真冬からたくさんの事を聞いた。

まず、この間不良達を倒したあの棒のような物。あれは両親から貰った大切な物らしい。
確かその時に名前も聞いたと思うがボンヤリとしか覚えていない。
せっかく教えて貰ったのに申し訳ない気持ちだ。


そう思いながら一人歩いていると向こうから誰かが走って来ている。
誰かと目を凝らしていればそれはたった今自分の中で話題になっていた真冬。





『ツナっ、おはよう!』

「おはよう、真冬」



真冬の手にはあの棒は持たれていない。
家に置いてきたのかなと思いながらどうしたかと聞けば『ちゃんと持ってるよ』の予想外の言葉。

驚きを隠せないでいると真冬は背中に手を回し隠した。
少しして背中から出て来た真冬のその手にはあの棒が握られていた。
突然の登場に俺は棒に釘付けになる。



「え…それって一体どこに…?」

『……強いていうなら背中…かな?』


「…あ!もしかしてそれって折りたためるとか?」




真冬の身長よりも長い棒を背中に隠すには折りたたみしかない。

それなら納得がいくと思ったが真冬は畳むことは出来ないと言う。
その言葉に自信満々に答えた俺は死にたい気持ちでいっぱいになり、足を止める。



『あ、あれ、ツナ!?どうかしたの?』

「いや…俺やっぱりダメだなって思って……」


今日が始まってまだ七時間ぐらいしか経っていないが死にたい。
下を見ながらはあ、とため息をするとそんな事ないよ!と真冬がいう。




『ダメな人間なんてどこにもいない!それに、ツナの良いところ、私知ってるから』



ね?と優しい笑顔を俺に向けてくれる真冬。
不思議と元気が沸いてきた。

再び歩き出した時には先ほどの話題は無くなっていて小さな沈黙が俺達を包む。
そこで俺は朝にあったあの出来事を話題に話してみようと考えた。





『え?女の人?』

「う、うん。缶ジュースを貰ったんだけど俺落としちゃって…でもそしたらその中から…」

『中から?』

「なんか…紫色の煙が中から出て来て電柱の上に居たカラスがその煙に当たって落ちてきたんだ」

『煙……?その女の人どんな人だった?』

「外人で…髪は長かったなあ。あとすごく美人だった」



ツナの言葉を聞きながら思い当たる人を考えてみる。
外人、長髪、美人な人……。




『…たぶんその人、ビアンキかも…』

「ビアンキ?」

『昔の知り合いなの』

「へえ、そうなんだ」

『うん。でも確かビアンキは…』



歩きながらビアンキについて話しているとツナが「あっ!!」と声をあげる。
その声に驚いて次に言う言葉を飲み込む。

何事か聞けばあと10分以内に学校に入らなければ遅刻になってしまうということだ。
ここからずっと学校まで走って行けばギリギリ間に合うらしいがそんな体力、ツナは持ってないだろう。


『間に合わないなら仕方ないし、別に遅刻ぐらいいいんじゃない?』

「ダメだよ!遅刻なんてしたら雲雀さんに噛み殺されちゃうよ!!」

『雲雀?誰その人』

「雲雀さんは並盛中で一番強くて不良の頂点に……ってもうこんな時間!もう遅刻決定だ!!」



ツナはもう泣きだしそうに見える。それほど雲雀という人は恐ろしいのだろうか。
まあ、かみ殺すと言っている時点で相当ヤバそうに思える。


『ツナは…遅刻したくないんだよね?』

「…そうだけど時間が無いし、遅刻しない方法なんてどこにも…」

『一つだけあるよ』

「!」

『ちょっとキツイけど遅刻したくないっていうなら…』

「ホント!?じゃあそれで行こう!!」



決まりだね。

真冬は笑顔でそう言った。




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