白き雪の結晶book

□一つの電話
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イタリアの小さな町の隅に、私はいた。

振動して電話が来たことを知らせている自分の手の中にあるケータイを眺めながら、ボタンを押した。





『…もしもし』



私の耳に響いてきたその声は懐かしい物だった。


目線を目の前から空の方へと向ける。

小さな鳥が一匹、空の向こうへ飛んでいったのが見えた。




『…電話なんて珍しいね。今度は何の用?』



「日本に来い」



『日本?なんでそんな所に……』


「獄寺が居るぞ」



『!!』

予想外だった言葉にピクリと肩が動き、ケータイを落としそうになる。





『っ……本当…?』


両手でケータイをしっかりと持って聞く。



「ああ。それと俺の生徒がいるぞ」




『……それって、10代目の事?』



「よく知ってるな。で、どうすんだ?」


その問いに少しだけ口元を上げる。



『もちろん。行くよ』





「…ベレーノファミリーのほうは大丈夫か?」



『大丈夫。私がここにいる事、まだ気づいてないから』


そう言ったあとに目で周りを確認する。





大丈夫、ここにはいない。


奴らはこの町に私がいる事は、まだ知らない。





『……』



「―おい、聞いてんのか?真冬」


『えっ?あ、ごめん…聞いてなかった……』



そう言うと向こうからため息が聞こえてきた。

もう一度、ごめん、と言った。




「もう一回言うぞ。場所は並盛、そこの中学校に獄寺達はいる」


『並盛…うん、分かった。ありがとう、リボーン』



じゃあね、と言って私は耳からケータイを離し、通話終了のボタンを押す。




いつの間にか下を見ていた目線を上に上げる。



『あ…』





今度は端から端にかかる虹が見えた。




『…わぁ』





日本か…





…楽しみだな……







2012 11.24 08:27

 

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