白き雪の結晶book
□転入生
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授業が始まり、教科書が無い真冬に俺は机を合わせて見せてあげた。
獄寺君はまだ来ない。
「…じゃあ最後にこの文の訳を…沢田、やってみろ」
「え!…(どうしよ…全然分かんない……)」
『ツナっ』
真冬に小声で名前を呼ばれ下を向くとノートをトントンと叩いている。
じっと目を凝らして見るとそこには綺麗な字で文の訳が書いてあった。
先生に急かされて、慌ててそれを言う。
「お、やったな沢田。正解だ」
「え!あのダメツナが!?」
「マジかよー」
「スゲーな、ツナ」
いつも当てられても答えられなくて恥をかくだけだったけど、今回は真冬のおかげで助かった。
「ありがとう」と席に座って言えば真冬は笑って『どういたしまして』と言った。
そのあとも俺は何回か先生に当てられたが、分からないところは真冬が教えてくれた。
真冬も当てられたがサラリと答えを言ってクラスを驚かせた。
とても難しい問題だったらしい。
そして4限の国語が始まった頃、ガラガラと音をたてて教室のドアが開かれた。
獄寺君が来たのだ。
クラスの男子はドアの開く音で後ろを見るが入って来た相手が獄寺君と知ると目を合わせないように黒板に向きなおる。
女子の方からはキャーと喜ぶ声が小さく聞こえる。
字を書いていた先生も遅刻した生徒を注意しようと後ろを向くが男子同様、獄寺君と知れば何も無かったように前を向いて授業を続けた。
獄寺君はそのまま自分の席に向かわず俺の席に来て挨拶をする。
「おはよーございます!!10代、目……」
「ご、獄寺くん?どうしたの?」
「真冬……」
「え?」
"真冬"
確かに獄寺君はそう言った。
隣を見ると真冬は獄寺君と同じ驚いたような顔をしていた。
隼人、と真冬の呟いた言葉がその場に響く。
「沢田、宮野、獄寺、どうかしたか?」
『……』
「え、いや……獄寺君、そろそろ席に座って……」
「…あ、はい…」
獄寺君が席に座ると同時に先生は授業を再開し、動かなかった皆の手が動く。
獄寺君と真冬を抜いて。