奇跡と運命book
□夏と始まり
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夏休み一日目が始まった朝、私は玲奈を保育園に送っていた。
そしてこの後理夢と図書館で夏休みの宿題をするのが、私の予定。
「お姉ちゃん!見て見て、アリさんの行列だよ!!」
しゃがんで地面に指を指す玲奈。
ため息をつきそうになったが、心の中でした。
『玲奈、それは昨日も見たでしょ?保育園遅れちゃうから早く行こ?』
ほら、とカバンを持っていない手を伸ばすと玲奈は、ニコッと笑って手を私の掴んだ。
『おはようございます』
保育園の入り口に行き、先生に挨拶をする。
「おはよう美咲ちゃん、今日もお母さんの手伝い?」
『はい、仕事が忙しいみたいだったので…』
先生は玲奈がいる事を確認すると、出席簿に◯を付けた。
「優しいお姉ちゃんがいて良かったね、玲奈ちゃん」
「うん!玲奈、美咲お姉ちゃん大好き!!」
こっちを見る玲奈にほほ笑むとニコッと笑った。
「玲奈ちゃん!」
向こうから声がしたと思えば、玲奈の友達の梨花ちゃんがいた。
「あ、梨花ちゃんおはよう!」
気が付くと玲奈と梨花ちゃんは教室へ向かっていた。
慌てて玲奈を呼ぶ。
『玲奈、ケガしちゃダメだよ』
「うん、分かった!」
玲奈が教室に入る所まで見て、私は保育園を出た。
「あら、美咲ちゃん?」
『え?…あ、園長!ど、どうも、久しぶりです!』
私が頭を下げるとそんなに固くならなくていいのよ、と笑われてしまった。
『あ、すみません…つい癖で…』
私が言うとそうそう、と園長が何かを思い出したように言った。
「絵里ちゃんは元気?」
その時、美咲の肩がピクリと動いたが園長は気づかなかった。
『あ、……はい、元気です…』
ふと飾ってある時計を見ると理夢との約束の時間まであと少しだった。
『…あ、私これから用事があるので帰りますね』
園長に軽くおじぎをして私は、保育園を出た。
そして園長の姿が見えなると私は暑い中、理夢が待つ公園まで走った。
理由なんてなかった。