奇跡と運命book

□夏と始まり
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ガチャ


【ただいまー】




「おかえり理夢、今日はハンバーグよ」


早く着替えて食べましよ?と言うお母さんにうん!と答えて私は2階に行った。







部屋の電気をつけ、中に入ると机の上には数学の参考書が開かれていた。


遠くからでも分かるぐらいそのページは真っ赤だった。


窓から風が吹いてページが変わっても色だけは変わらない。


【……】

パタン



私は参考書を閉じた。














……ハンバーグかぁ…。

着替えながらそんな事を考える。



雲雀さんの好きな食べ物……。



【ふふっ……】

なんだか嬉しくなり口元があがる。



私服に着替えて階段を降りるとハンバーグの良い匂いがした。




「理夢、これ運んでくれないかしら?」


降りてきた私に気付いたお母さんが言う。



【うん、分かった】













ご飯の用意が出来たので私は食べることにした。

お父さんとお兄ちゃんは遅くに帰ってくるらしい。目の前にあるおいしそうなハンバーグに箸を伸ばす。



「理夢は明日から夏休みだっけ?」



【…うん、そうだよ】


嫌な予感がした。






「じゃ、今のうちに勉強頑張らないとね」





箸を持つ手が止まった。



箸が止まった私にお母さんがどうしたの?と聞いてきて箸を動かす。


【え、な、なんでもない…うん、そうだね…】



「数学の参考書はちゃんとしてるんでしょ?」


【…うん、してるよ】




「なら大丈夫ね、次のテスト楽しみにしてるわね」








【………うん】


私は笑顔で言うお母さんを前にそれ以外の言葉は言えなかった。







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