遥かなる時

□繋がらない想い
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―深雪said―

まだ 晴明様のお屋敷を出て3日しか経っていないのに、晴明様が恋しくて仕方ない自分がいた。
(こんな風に甘えているから、晴明様に嫌われちゃったのに…)
そう思うと心がズキッと痛む。
そっと胸に手を当てると、まるでそこに傷口があるかのように、ズキズキと鼓動を打つのが分かる。

(会いたい…でも、嫌われてるの分かってるのに、会いに行ったらただの嫌みになっちゃう…)
きっと優しい晴明様なら、優しく微笑んで受けれ入れてくれる。
晴明様の優しさに甘えようとする自分が嫌で仕方なくなってしまう。
「 深雪…」
「っ!!都緒子様…」
「数回呼び掛けたのだけれど…何を考えていたの?」
私はそうとう物思いに耽っていたらしく、都緒子様が話しかけているのに、全く気づかなかった。

「すみません!!」
「良いのよ。何を考えていたの?」
「えっと…」
「当ててあげるわ。愛しい方のこと…でしょ?」
「っ!!」
都緒子様の図星の答えに思わず言葉に詰まってしまう。
「当たりね。」
都緒子様は、ふふっと笑うと、そっと私が見ていた空の方へ視線を移した。
「貴女を預かって3日になるけど、未だに心からの笑顔を見たことがないわ。いつも寂しそうで悲しそうで痛そうで…見ていて辛いのよ?」
都緒子様は、空から私に視線を移した瞳は少し寂しそうだった。

「笑えてないですか?」
私がそう訪ねると、都緒子様は小首をかしげながら
「貴女の本当の笑顔は、晴明様のそばにあるんじゃなぁい?」
と言ってきた。
「私は…」
私は晴明様の側に居たい…でも、晴明様は違う…そう思うと答えに詰まってしまう。
「言ってごらんなさい…楽になるかも知れないわよ?」
都緒子様はそっと、私の肩に手をおきもう片方の手で私の手を包み込んだ
「私は…晴明様の、側に居たいです。でも、晴明様の負担にはなりたくないんです。迷惑にもなりたくない…。」
「晴明様から、そう言われたの?」
「へ?いいえ…でも、屋敷を出てみないかと言われました…晴明様は優しいから、遠回しな言い方で言ったんだと思います。」
話していると、言われた時のことを思いだし、胸が苦しくてたまらなくなる。
「確かめないの?」
都緒子様の言葉に頭の中が真っ白になる。
「な…にを?」
「本当の晴明様の気持ちを。」
「っ!!嫌です!!また、私に傷付けっていうんですか!?」
「違うわ。貴女たちが、すれ違って居るように見えるから…」
都緒子様が、そっと私の頬に手を触れてきて、自分が泣いていたのだと気づいた。
「ちゃんと、話してみたら違う答えが貰えるかも知らないわよ?」
都緒子様は優しく微笑みながら、そう言うと私の髪を撫でた。
「遅い時間に話させてごめんなさいね。明日は小夜子様のところへ行くのでしょう?もう、おやすみ。」
「はい。お休みなさい都緒子様。」

私は部屋に戻り布団へ入ったが、都緒子様の言葉が頭から離れず、なかなか寝付けずにいた。
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