遥かなる時

□繋がらない想い
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あんな小さな体に悲しみを詰め込み耐えていたのかと思うと、堪らなくなる。

「 深雪殿は今、俺の知り合いの都緒子様のところに居る」
「そうか…」
「小夜子様のところにも通っているそうだ」
「小夜子様の所に!?俺はもう行っていないものかと…」
「行かなければお前に良からぬ噂がたつかもしれん…だから、行き続けているのだろう」
「 深雪… 」
あんなに傷ついたはずなのに…それなのに俺のために行き続けているのかと思うと、申し訳なさと愛しさに胸が支配された。
「晴明…迎えにいかなくて良いのか?」
博雅が、心配そうな顔をして聞いてくる。
「俺は…っ…」
迎えに行きたい、そう答えたいが、あれだけ傷付けておきながら、どんな顔をして会いに行けば良いのか分からなかった。

無意識のうちか盃を掴む手に力が入り、ギリッと音がなった。
「 深雪殿は、お前を待っていると思うぞ?毎晩寝る前にお前の書いた文を読み返しては、寂しげに空を見上げていると、都緒子殿から聞いた。」
博雅は空を見上げながら、呟くようにそっと教えてくれた。
「明日、小夜子様のところに行く予定だが、共に来るか?」
「博雅…」
この友人は見た目は武骨だから、中々気の利く優しいやつなのだと、改めて思わされた。
「そうだな…共に行こう。そして、迎えに行き、誤解を解かねばな。」
俺は自分と博雅に言い聞かせるように呟き、盃の中の酒を勢いよく飲んだ。
博雅を仰ぎ見れば、しっかりと頷いたのだった。
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