遥かなる時

□共同生活2
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「何が困ったのだ?」
「「え?」」
突然聞こえた晴明様の声に、私と博雅さんは同時に声を出し辺りを見回した。
「晴明様居ないのに声した?」
ポツリと呟くと
「下に居る。」
と答えられた。

私と博雅さんが下を向くとそこには小さな鼠が私たちを見上げていた。
「え…晴明様って動物になれるの?」
私は純粋な質問を鼠に投げ掛けた。

(何だろう…。この鼠、呆れてる?)
人間だったらため息を付き添うな顔で鼠は、私を見上げていた。
「 深雪、俺の力を使えば鼠とて式神にもなる。」
呆れ顔の
鼠が晴明様の声で教えてくれた。

「晴明、実はな…忠家様が小夜子様にある頼まれ事をしたらしいのだ。」
「ある頼まれ事を?」
「あぁ。小夜子様が、屋敷には女妾が少なく、話も聞いてもらえなくて寂しい。誰か良き女子は居らぬか?と…忠家様に尋ねたらしいのだ。そして、忠家様は「 深雪の名でも出したか 」」
博雅さんの話が終わる前に晴明様の声が重なった。

「なぜわかるのだ晴明。」
「分かるさ。」
「そういうものか?」
「そういうものだ。」
晴明様の声で話す鼠と真剣に話す博雅さんは、なんとも面白いが内容があまりにも私には危険に聞こえた。
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