遥かなる時

□出会い
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私が軽く頭を下げると、彼女も同じように会釈返してくれた。

「私のこと、助けてくれたんだよね?ありがとう。」
私が笑いながらそう言うと、何故か密虫と晴明は驚いたような顔していた。

「変なこと言った?」
私が少し慌てると
「私達、式神にお礼を言う方はいらっしゃらないので、驚いたのでございます。」
密虫は、袖で口許をかくしながら、鈴のような声で教えてくれた。

「しかし、密虫がそなたを助けたことで、問題が起こったのだ。」
「問題?」
「ああ。式神…特に密虫の力が発揮できるのは、満月の夜のみだ。」

晴明の言葉を聞いて、私は月が天に昇ったばかりの空を見た。
月はもうすぐ真ん丸の状態だった。
「それなら、もうすぐ満月じゃない。」
私が空を指差し、晴明を見上げた。
「満月は、一昨日の晩であったか…」
晴明は空を見上げたまま、たんたんと伝えてきた。
「じゃぁ、あれって満ちてる途中じゃなくて、欠けてく過程なの!?」
私の叫びが静かな夜空に子騙した。
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