遥かなる時

□共同生活2
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「ん…」
少しの肌寒さと眩しさに意識が呼び戻され、重い瞼を上げた。
「ん…、あれ?晴明様?」
昨日あったはずの温もりが自分の側に無いことに気付き心細くなる。

そっと回りを見渡すと、淡い桃色の和紙が枕元に置いてあるのに気づいた。

「ん…あ…!」
広げてみると達筆の字で書かれた数行の手紙だった。
(晴明様…)
『 深雪、おはよう。これを読む頃には俺は陰陽寮に出仕しているだろう。良く寝ているから安心したが、あまり無理をしないように。今日は早めに帰る。』
きっと、出仕するのに忙しいはずなのに、私のために手紙を書いていってくれたことに嬉しくて堪らなくなる。
私は読みおえたばかりの手紙を胸に抱きしめた。

「 深雪様…朝食にございます。」
部屋のふすまの外から女の人の声が聞こえてきた。
「蜜虫?」
「はい。晴明様に、 深雪様が起きたら朝食を召し上がられるよう、言われましたので。」
「分かった。今行くね。」
私は蜜虫に返事をすると身支度を整え部屋を出た。

「相変わらず美味しい…」
私がぽそっと言葉を漏らすと、蜜虫が嬉しそうに頭を下げた。
旅館の朝御飯に匹敵するほどの美味しさだ。
私は嬉しく思いながら、全て食べ尽くした。
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