読物

□息をするように嘘を吐く
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「心中でもしようか」

書類に埋もれた大王が溜息混じりにぼそりと言う。聞き逃さなかった私はお茶を差し出しながら答えた。

「どうしたんですか、いきなり」
「もう仕事にも疲れたし。どこに逃げても捕まるからもういっそ雛ちゃんと心中でもどうかと」

お前のサボり癖から勝手に私まで巻き込もうとするな。そう言い返してやろうかと思ったけれど、やめた。なんだか今日の大王は本当に疲れているらしい。

不覚にも心中でもまあいいかと一瞬思ってしまった。正直私も淡々と流れる何等代わり映えのしないこの毎日に飽きたところだった。

「でも大王、私達もう死ねませんよ」

もう私達は死んでいる。その上でこの役割を受けたのだ。だから、死ねない。逃げられない毎日の中にいる。それもそうだ、と笑った彼はどこか遠いところを見るような目をしていた。



息をやめるの



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息抜きに久々に書きました。
タイトルは無秩序様から頂きました。有り難うございます。



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