黒バス長編

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リコ「みんな、ちょっと集まってくれる?」


監督であるリコの召集で、部員達は彼女の下へと駆け寄る。



日向「どうしたカントク。練習試合……はねぇわな」

主将であり長い付き合いである日向は、リコの雰囲気で練習試合を組んだ話ではない事を察する。


リコ「…突然だけど、今日取材が入ったわ!」

伊月「え、取材!?」

日向「またかよ……」


小金井「あれ?てかこの前の出版社で全部じゃなかったっけ?まだ他にあったっけ?」

水戸部「………」

小金井「水戸部も知らないよなー」

土田「じゃ、スポーツ雑誌以外とかかな?」



福田「スポーツ以外だとしたら何があるんだ?」

降旗「えーと、女性向けの雑誌とか…芸能雑誌?」

河原「マジで!!? オレら芸能人とかの仲間入り!!?」


火神「つかカントク…。そう言うのはせめて前日とかに言えよ……ださい」



リコ「んー、火神くんの言う通り、本当は事前に言っておきたかったんだけど…。あと、みんなが期待しているような取材じゃないわ」


リコの言葉に、部員達は疑問符を浮かべる。


リコ「ある人が“個人的に”取材したいらしいの。だから、雑誌とかそう言うのじゃないの」

そう告げられ、安堵を吐く者、肩を落とす者、なんとも思っていない者と、十人十色な反応を見せた。



日向「それでカントク。その人はいつ来るんだ?」


リコ「うーん、もうすぐ来るはずなんだけど……」

リコは体育館に備え付けられている時計を見上げ、小首を傾げた。

小金井「え、まさかの遅刻!?」

伊月「社会人だし…それはないんじゃないか? はっ、内科に行かないか…キタコレっ!」


日向「キてねーよ!!お前だけ診てもらって来い!!!そして帰ってくるなッ!」



降旗「あれ、そう言えば、今日は木吉先輩病院ですか?」


リコ「そうよ。でも、後でちゃんと来るわ。問題が無いようなら練習にも出るみたい」







「――すみません、大変お待たせ致しました」


木吉「おー、みんな久し振りだなぁ」


体育館の出入口から二人の男が入ってきた。
一人はこの誠凛バスケ部員であり、かつての【無冠の五将】「鉄心」木吉鉄平。
彼は朗らかな笑みを浮かべ、部員達に合流する。


伊月「久し振りって…、昨日も会ったし、1時間前も校舎で顔合わしてるだろ」


木吉「ん、そうだったか?」


日向「つか木吉、また上履きのまま来やがって!」


木吉「おおっ!気付かなかった!」


木吉は「はははっ」と笑い、日向は寄った眉間のシワに指を添えた。



「あまり貴校の地理は詳しくなかったもので…、正直迷ってしまいました」

今回、取材を申し込んできたであろう記者は年若く、しかし整えられた身なりは、仕事が出来る雰囲気を醸し出していた。

細身の眼鏡から覗く双眼は、記者の柔和な人柄を表していると同時に、どこか鋭い感じを覚える。



「校内を彷徨っていたところ、彼が通り掛かって下さり、とても助かりました」


木吉「いえ。でもまさか、記者の方とは思いませんでした」


日向「ちょっと待て、木吉が道案内!? おい木吉!ちゃんと道案内したんだろうな!!? 変なところに行ったりしてねーだろうなッ!?」


木吉「…日向、その言い方は流石の俺でも傷付くぞ。まるで俺が……何だっけ?」


日向「知らねーよ!いっつもフラフラどっか行きやがって!」


広い体育館に、乾いた音が響いた。


リコ「はいはい二人共ー!ケンカはいつもの事だけど、今は取材の方が見えてるの!みっともない事しない!」

リコは手を叩き、部員達の注目を集める。
改めて取材と言う事を理解し、部員達は緊張の面持ちを見せた。



「それでは、取材を始めさせて頂きますね。…取材と言っても、私個人のインタビューなので、気を楽にして答えて下さい」


「「「は、はい!」」」

記者はそう前置きするが、多くの部員は更に背筋を伸ばしてしまう。


日向「ったく。お前ら、記者さんが気楽にしろって言ってんだぞ!んなビビってたら、逆に失礼だろーが!」


「流石主将ですね。では、最初に日向さん、お願いします」


日向「ぅお、ぉぉ俺ッすか!?」

記者は日向の前に立つと、質問を始める。


「まずは無難に…優勝おめでとうございます。新設2年目にして優勝でき、そのチームを引っ張っていた主将として、そのお気持ちは?」


日向「ぅ、ぅゥゥ嬉シイデス!」


伊月(日向…メチャクチャ緊張してるな)


小金井(ちょっとヤバイよオレ!笑えてきたんだけどっ!)


水戸部(オロオロ…)

小金井(心配しなくても平気だって、水戸部!)




「なるほど、やはり精神的支柱である日向さんが、チームを引っ張っておられたようで。I・Hでは果たせなかった夢が実現されましたねー」


日向「ハイ、ソノトオリデ!」


ガチガチに緊張している日向に、後ろに控えている部員達は口を押さえ、必死に笑いを堪えていた。


「ぷ…くくく…ははっ」

そしてついに、笑いという名のダムが崩壊してしまった人物が。


日向「え…」

しかし、それは意外過ぎる人物だった。


『くくっ…、緊張し過ぎだろ。どんだけ取材慣れてねーんだよ』

口と腹を押さえて、記者はプルプルと小刻みに震え、笑っていた。


日向「え!? ちょっアンタ!?」


『っと、悪い。素が出ちまった…。……まぁ、んな緊張しなくてもヘーキだからよ、日向クン』


小金井「き、記者さんが壊れた!!?」

『そもそも俺は記者じゃねーよ』

そう言って、記者もとい青年は整っていた身なりを乱し、最後に眼鏡を取り言った。




『鳴海恭介。君らと同じ、高校生だ。……ちなみに3年な』


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