黒バス長編

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黒子はポツリポツリと話し出した。


黒子「ご存知かも知れませんが、僕は昔「キセキの世代」のバスケが間違っていると思い、彼らと戦う事を選びました。そして、数々の強豪校を倒し、決勝で僕らは赤司くんに打ち勝つ事が出来ました」

鳴海は静かに頷く。


黒子「先輩達の…誠凛(みんな)の夢が叶って、本当に嬉しかったです。僕もキセキの人達にバスケの楽しさを思い出してもらえて、よかった……よかったんですが…《♪〜♪♪〜》」


黒子が言葉を濁すと同時に、初期設定のままと思われる着信音が響いた。



黒子「………」

『出なくて良いのか?』


黒子「…いえ、メールなので《♪〜♪♪〜》」

《♪〜♪♪〜》《♪〜♪♪〜》《♪〜♪♪〜》


『お…(おいおいおいおい…)メル友…すげぇ…な?』


黒子「………」

黒子は溜め息を吐き出し、渋々と届いたメールに目を通していく。
一通り読み終えたのか、黒子は再び溜め息を吐いた。



『…大丈夫か?』


黒子「……ちょうど僕のお話ししたかった内容が届きました。よかったら見て下さい」


『良いのかよ、俺が見て』


黒子「はい、平気です。見られて困るものではないですから」


『まぁ、黒子クンがそう言うなら……失礼して…』

黒子は鳴海にケータイを手渡す。受け取った鳴海は、着信の早いもの順に目を通した。






From:黄瀬くん
件名:くぅぅろぉぉこっちぃー!!
―――――――――――――
今日いっしょに帰ろうと思って部活サボって校門で待ってたんスよ〜(。´Д⊂)
なのに黒子っち全然出てこないし…ひどいっスよ〜!!
そしたら仕事の時間になるし…、今日一緒に撮影するモデルの子やたらオレにベタベタしてくるんスよ〜ι(`ロ´)ノ

そりゃまぁ顔はかわいいスけど、黒子っちの方が100倍!かわいいっス!!!
今日もモデルの子を黒子っちと思ってがんばるっスよ(ハート)









『“黄瀬くん”って、モデルのキセリョ!? つか部活サボってるぞ!? 良いのか!??』


黒子「良くないです」


『けどやっぱ黄瀬クンはモテるんだな。…でもこれ自慢?あまりいい気分ではねーよな』


黒子「そうですね、やめてほしいです」
(ハートの絵文字が使われている事については触れないんですね)








From:緑間くん
件名:返信は返すのだよ
―――――――――――――
黒子、今朝送ったメールはちゃんと読んだのか?
返信はするべきなのだよ。でなければ相手が既読済みかどうかわからんではないか。
まぁとにかく、俺が今朝送ったメールの内容は実行しているのか?
今朝も送ったが、今日のみずがめ座のラッキーアイテムはスタンガンなのだよ。お前に近づく害虫はそれを使って倒せ。

やはり、おは朝は実によく当たるのだよ。









『スタンガンがラッキーアイテムって、黒子クン誰かにストーカーされてんの?』


黒子「…心当たりがありすぎます」


『マジか。ちゃんと誰かと一緒に帰ってるか?あ、黄瀬クンといつも一緒に帰ってんのか』


黒子「全力で否定します」








From:青峰くん
件名:なぁテツ
―――――――――――――


今日のお前パンツなに柄?










『ストーカーこいつだろッ!!』


黒子「彼はストーカーなんてしません。正々堂々と真正面からセクハラしてきます」

『それ思いっ切り現行犯じゃね』







From:紫原くん
件名:無題
―――――――――――――
やっと部活終わった〜、ちょー疲れたし…
さっきお菓子食べてたら、黒ちんのこと思い出したー
つか、オレいつも黒ちんのこと考えてるし
ねぇ黒ちん、黒ちんは食べたらきっと綿菓子みたいに甘いんだと思うんだよ
だから黒ちん、食べていい?









『……………』

黒子「…………」


『……懐かれてる…な』

黒子「…そうですね」


『この紫原クン、その…カニバリズムの子なのか?』


黒子「違うと思うのですが…すみません、全面的に否定が出来ないです」









From:赤司くん
件名:僕の言うことは
―――――――――――――
テツヤ、また変な虫がついたようだね。僕らキセキだけでも大変なのに、まったくテツヤは悪い子だな。

まあ、きっとその虫はこのメールを読んでいるだろうから、虫が害虫になるか益虫になるか…

見物だね。









『――ッ!?』


黒子「すみません、赤司くんはそういう人です」


『この子見えてんの!つかどっかにいるの!?』


最後に送られてきた赤司からのメールを読んだ鳴海は、反射的にケータイを落としそうになった。
流石というべきか、まるで見ていたかのように赤司のメールは現状を指し示していた。
鳴海は咄嗟に周囲を見回した。










『――で、結論は……』

黒子「はい。キセキの人達に、バスケの楽しさを思い出してもらえてよかったんですが…お察しの通り、困っています。その…」

黒子は後の言葉が言い難いのか、少し視線を俯かせた。

鳴海は続く言葉が何なのか理解していた。だから、自分では言い難いだろうと、口を挟んだ。




『仲直りしたは良いが、キセキが黒子クンを愛し過ぎて正直困る、と…そんなところか?』



黒子「はい、そうなります」

話している間に互いのシェイクやポテトが無くなり、トレイなどを指定の位置に戻しに行く。



『要するに、俺が知り合いに聞かされていた情報は一部訂正になる訳か…』

鳴海は頭の中で、改めて黒子の情報を訂正する。


【誠凛高校1年。WC優勝。幻の6人目で、あの「キセキの世代」から一目置かれている】

から、


【誠凛高校1年。WC優勝。幻の6人目で、あの「キセキの世代」から一目置かれると同時に、底知れぬ愛情を向けられている】

……と。


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