マギ長編2

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ザイナブ「カシムの本隊が来たぞ!!」


ハッサン「ざまぁみろ!!カシムの本隊が来りゃこっちのもんだ!」




ジャ「!!?」


カシム率いる本隊が現場に着いた時、ザイナブ達はいつに無く手間取っている様子。

そう、対峙していた者は国軍ではなく、シンドバッド治めるシンドリアの八人将の一人ジャーファルだったのだから。


ジャーファルが身構え、カシムが黒縛霧刀を構えると、二人よりも速く動く影が……。





ジャ「――――ぐ!!?」


その影はジャーファルに素早い一撃を喰らわせた。
そのまま彼の体は地に伏されてしまった。




ハッサン「はっ、どうだ!本隊にはその斬り込み隊長がいるんだ!そいつはメチャクチャ強えーからなっ!!!」


ザイナブ「そいつは頼んだよ!」


霧の団はカシムらを筆頭に、屋敷に開けた穴に向かっていく。



ジャ「ッ…(なんて力だ!)」

ジャーファルは奥歯を噛み締め、自分を押さえ付けている人物を注視する。


歳はさっきの霧の団の幹部と差異ないが、明らかに実力が飛び抜けている。

腐っても自分は一国を護る程の力量を持っている。
その自分と同等、または上回る程の力をこの少年は有している。



妖しげに赤く光る双眼は獰猛な獣達によく似ている。
その上、布で隠されていた口元が風に靡き見え隠れし、鋭い犬歯が覗いている。



ジャ「君は……一体…っ」


ドカッ!!



『――――!』




カシム「ちっ、もう一匹いたのか」

背後から迫ってきた少女こと、モルジアナは間一髪のところでカシムの黒縛霧刀の技に捕まる。

暫しの間、彼女は黒い霧と格闘していたが、2発目を受け、地面に伏されてしまった。





アリババ「!!?」

刹那、アリババは顔を覆う布を握った。
キリフォードも少ない理性の中でモルジアナを認識し、僅かに動揺した。



ジャ「くっ……ぅ…!!」

しかしジャーファルの首を締め付ける手は緩む事は無かった。

ジャーファルは隙を突く気でいたのだが、ビクともしない。






その内に、団員達は豪商の金や財宝を奪い、あとは逃げるだけになった。


それを見たジャーファルは叫ぶ。



ジャ「……アラジン!!逃がしちゃだめだ、捕まえて!!」


その声が届き、アラジンは咄嗟にウーゴくんの笛を吹いた。

ウーゴくんの巨体が行く手を遮り、霧の団は突然の事に悲鳴を上げた。




――アラ…ジ…ンまで…


キリフォードはウーゴくんの上で勇み立っているアラジンを目にし、些(イササカ)か理性が戻ってきた。




ジャ「―――!」

眼下のジャーファルが息を呑んだ音がした。




視線の先には、覆面を取りアラジンに正体を明かしたアリババ。

彼の言葉にアラジンはウーゴくんを仕舞い、嬉しそうに話し掛けた。


健気で、半年前と何も変わっていないアラジンに、キリフォードは安堵と共に、苦渋に表情を歪めた。


アラジンもモルジアナも、半年前とほとんど変わっていない。
「性格」や「外見」の問題ではなく、根本的な「何か」が。



それを言えば、アリババだって大きな変化はないだろう。

しかし二人とは違い、今の彼は目に見えない様々な「何か」を背負い、抱えている。






だから―――












アリババ「アラジン……ごめん…」


アリババはアラジンの肩に手を置く。









アリババ「約束は、守れなくなったんだ」








アラジン「   」




言葉が出てこない…。


アラジンの純粋に、真っ直ぐ差し伸べられた手は、霧深い空を撫でるだけだった。
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