マギ長編2

□43
1ページ/1ページ




――君の鎖は、もう取れたはずだよ。モルジアナ……




誰――!?








盗賊の砦の中心部。
そこでは非情な光景が広げられていた。

砂漠ハイエナが群がる檻の中に、小さな少女ナージャが落とされ、少女を喰わんと襲い掛かっている。


檻の外で、モルジアナは必死に足枷を外そうと藻掻いていた。

強固な枷に絶望し掛けたその時、モルジアナの耳に声が届く。





モルジアナは涙を流し、その声に返す。



(あの頃と同じだよ…。逃げたくても、絶対、逃げられないんだ)


彼女の弱気な言葉に、声は優しく諭す。


君は昔とは違う。成長した、主人は死んだ、奴隷身分からも解放された。

成長した今の彼女には、そんな鎖も足枷も無いのと同じだと。


その言葉に1つ1つに、彼女は駆り立てられる。













―――なぁ、嬢ちゃん


不意に、脳裏にもう1つの光景が蘇った。彼らがバルバッドに旅立ってしまう前日、去り際に彼に呼び止められた時の記憶。


*****






モルジアナ「……なんですか?」


『さっき嬢ちゃんは、言ってたな。足首から枷が消えた時、息を呑むような気持ちを味わったって……』


モルジアナは無言で頷く。



『……嬢ちゃんは長い間鎖に繋がれていた。だから、ふとした瞬間、過去が蘇り、お前を苦しめる事がきっとある…』

彼は真剣な瞳から優しげな瞳に変える。



『けどな、嬢ちゃんは今、奴隷から【解放されて】ここに居る。

過去の恐怖から逃げるな…なんて言わねー。忘れろとも言わねー。ただ覚えとけ、お前は“ファナリス”だ。誰もお前達を捕らえる事なんて――…』





*****






モルジアナは地を高く跳んだ。

そして圧倒的な実力で、次々と猛獣達を蹴散らし、その中心に凛と立つ姿はその名に相応しい。





――誰もお前達を捕らえる事なんて出来やしねーんだからな。

お前達ファナリスは、【暗黒大陸の覇者、地上最強の戦闘民族】なんだからさ。


























「おーい、誰かあいつ知らねーかぁ?」


「あいつって…あぁー、さっきまた出掛けていったよ。あいつに何か用があったのか?」



「いやさー、噂の砦の盗賊団が壊滅したって、教えてやりたかったんだけど…」



「そういやあいつ、すごく気にしてたな。なんでも一家を見送ったとかどうとか…」



「……ホント、お頭や幹部以外とは馴れ合わねーよなあいつ…」












?「キリ…」


『なんだよ、お前から話し掛けて来るなんて珍しいじゃねーか』


?「…別に、お前はいつもあいつにべったりだからな…」


『……甘えたがりな子供みてぇに言うんじゃねーよ』


スラムの一角の建物の上に、その姿はあった。


座り込んでいるキリフォードの背後に、長髪の男が背中合わせに座り込んだ。




『……甘えたがりはどっちだよ。ずいぶんと部下達の前と違うじゃねーか』


?「……うっせ」

拗ねたように、体重をかけてくる彼に、キリフォードはククッと声を押さえるように笑う。











『久し振りに、ケンカでもするか…?なぁ、カシム』

_

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ