マギ長編2

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ババ様「と、言うのが、2つの話の結末じゃ……」


アラジン「……そんな事があったんだね…。キリくんは…大切な友達を亡くしたんだ……」


アラジンはババ様の話を聞くと、胸元の笛を無意識に握っていた。







ドルジ「そういや、思い出した!そのお前の言う“キリ”ってヤツ、昔この村に来たぞ」


アラジン「え、本当かい!!?」


トーヤ「……そう言われれば、彼も君みたいに偵察隊に拾われて…」

そう言い掛けると、トーヤは頬を染め、俯いてしまった。
それを見たドルジは反対に青ざめ、俯いた。



アラジン「……お姉さん達はどうしちゃったんだい?」


ババ様「ほっほっほっ。なぁに…ちょっとしたアレじゃよ」


アラジンは首を傾げると、近くにいた青年、バートルが耳打ちする。









「トーヤのヤツ…初恋だったんだよ」


アラジン「はつこい…?」



ドルジ「………」


「あ、ドルジのやつ、魂が出てらぁ」

ドッとテントの中は笑いに包まれた。






所変わって、近くの広場で、アラジンはトーヤとドルジと話をしていた。



アラジン「へー、お兄さん達は【騎馬民族】なのかい?」


騎馬民族とは、馬と生き、馬を駆り、戦う“戦闘民族”だとドルジは話す。

だが、アラジンはすでに馬の乳に夢中で聞いてはいない。






トーヤ「ちなみに黄牙に対して、魔狼牙は自らの足で駆り、戦う戦闘民族なのよ?」


アラジン「あ、それってアレだよね?自分が狼になれるから、お馬さんに乗る必要がないんだよね!」


ドルジ「“地上最速の戦闘民族”だからな。この地上に、あいつら以上の速度を持った生物は居ない訳だ」


三人は語らぎ、和やかな時を過ごしていた。



後にアラジンが馬に乗ってしまい、興奮し暴れだしてしまう。

そして颯爽と現れた煌帝国の姫、練白瑛によって助けられ、アラジンは彼女と巡り会う。






――こうして、世界は刻々と1つの【運命】に導かれ、物語を綴っていく。




そして半年後、黄牙の村から西南へ視点を変える。




ライラ「買った買った、この町じゃ穫れないもんばかりだよ!!カバブのおじさん、口直しにどうだい?」



オアシス都市、デリンマーの市場で凛と響く声に誘われ、その店に寄れば、若い女性が活気に溢れた売り子をしていた。

彼女の捌きは絶妙で、次々に品が売れて行く。



ライラ「おい、売り切れちまうぞ、荷はまだか?」


サアサ「今、まとめて運ばれてくるわ。――あ、ホラ!」



ライラが親友のサアサに訊ねると、タイミングよく現れた大量の荷物。




ライラ「すごいなぁ!お前がウチの隊商に入ってくれて、本当によかったよ」


ライラは大量の荷物を一気に届けてくれた人物を絶賛する。

三人がかりでやっと運べそうな荷物を運んできたのは、彼女達と年の変わらぬ少女。



一文字に結ばれた口からは言葉は発せられず、淡々と作業をこなす赤毛の少女の名を、ライラは告げる。




ライラ「本当に助かるよ! なぁ、モルジアナ!」



モルジアナ「………はい…」



――ここからも一人の少女が【運命】に導かれ、歩みを進めていく。








*****






『……俺はここまでしか送れねぇ。悪いな』


「いえ!ここまで送っていただけて……十分です!」


「本当にありがとうございます…!」


『……気を付けろよ。この先、最近盗賊が住み着いたって噂があるからな』

そう言うと、男女は不安げに表情を歪めた。



「お兄ちゃん…一緒に行けないの…?」


幼い少女は、寂しそうに青年の服を握った。
すると青年は少女に目線を合わせ、頭を撫でる。



『ごめんな、ナージャ。俺はバルバッドから離れられねーんだ…。大切な…“主人”を護らなきゃいけない』


そう言って青年は、ナージャの小さな掌に、少しの金を握らせた。



『――じゃ、家族全員、無事に暮らせよ』

ヒラリと右手を翻し、青年は足早に去っていった。













「本当に、ありがとう!!
――キリフォードお兄ちゃん!」
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