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□何の変哲もない
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――何の変哲もないある日。
『ふぁあああ……』
いつものように寝起きの悪い陽太は寝癖の付いた頭を揺らしながら、昼前に目覚めた。
まだ寝足りない目を擦り、目的の人物を探す。
寝巻きである、フード付きのトラ猫のパジャマを着た陽太は、見るものの癒しだったりする。
トテトテと廊下を歩けば、皆が笑顔で「おはよう」と言ってくれる。
目的の人物が居るであろう部屋の扉を開けると、その人は鬼道と戦術について話し合っていた。
『ふどーさぁ……』
不動「よぉ、やっと起きたか」
鬼道「陽太。もう少し早く起きる事は出来ないのか?朝飯は皆で食べた方が良い」
不動「起こしたって起きねーんだ。自然に起きるまで待つしかねーだろ」
不動は陽太の両脇に手を入れ、抱き抱える。
不動「んじゃ、こいつの髪直してくるから、席はずすわ」
鬼道「……お前はとことん陽太に甘いな」
溜め息を1つ。しかし彼の表情は「呆れ」ではないようで、やはり彼自身もこの子供に甘いらしい。
不動に抱き抱えられ、陽太は居心地の良さに不動の肩に擦り寄り、再び眠りに就こうとする。
不動「こぉら、寝んじゃねー。昼飯まで抜く気か」
空いている手で、軽く陽太の頬をペシッと叩く。
『ぅぅぅぅ……ぅぅ』
それが不満のようで、陽太は不動の手をペチペチ叩き返す。
そうこうしてる内に陽太の寝癖は綺麗にされ、不動は陽太を洗面台へ連れてきた。
下手に寝こけて頭をぶつけないように見張りつつ、陽太が自ずから顔を洗うのを見守る。
『ふどーさーん!おやつもらいましたー!』
朝食時に居なかった陽太の為に、マネージャー達が陽太の分のデザートを残しておいている光景は、もはや恒例である。
ちなみに今日のデザートはパンケーキだ。
メンバー達のものと比べて、かなり小降りなパンケーキを陽太が美味しそうに食べていれば、マネージャー陣も花が咲くような笑顔を陽太に向ける。
不動「陽太、今日の練習は16時からだとよ」
『じゃ、みなさんにサッカーおしえてもらえるんですねー!』
にぱっと嬉しそうにはにかむ陽太は、さっそくサッカーボールを持って部屋を飛び出していった。
不動も口元を緩め、後ろを着いて行きながら、彼を見守る。
『あ…』
すると陽太の手からボールが滑り落ち、独りでに転がっていく。
それを追いかけて行く陽太に「危ねーから前を見ろよ」と声をかけようと口を開くと、咄嗟に別の言葉が出てきた。
不動「陽太ッ…危ねー!」
ボールを拾い上げた所は階段のすぐ手前。
すると足を踏み出したと同時に段差を踏み外し、陽太の小さな体は宙を舞った。
『ふ、ふどーさ……!!』
ただでさえ大きな瞳を更に見開き、陽太はこの一瞬に不動の名を呼んだ。
――――----……‥‥
大きな物音を聞きつけたメンバー達が、階段の前で倒れている陽太と不動を見付けた。
不動は陽太を護るように両腕に抱き抱え、陽太はショックのあまり気絶はしているものの、打撲も無かった。
――よかった。怪我はねーみてぇだな……。
不動はホッと胸を撫で下ろした。
だが、この後いつもの何の変哲もなかった日常ではあり得ない出来事が起こっている事に気付かされるのだった。
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これは、友達サイト『Right swallow』にリクエストした作品を読んで思い付いた、いわゆる前置きです!
千さん、ありがとうございました!そして勝手な事をしてすみませんでした(>_<)
ご報告下されば、リンクを外しますので…!
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