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□バレンタインでー
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うーん……
この時期になると自ずと店の一角に出来る、とあるコーナー。
様々な飾り付けやデコレーションが施された甘い甘い想いのこもった【それ】を売り出しているそこに、不釣り合いな光景が二つ。
速水「ぅぅ…、やっぱり来るんじゃなかった…。ま、周りの目がぁ…」
一つは、普段は使用しないだろう帽子を深く被った雷門中サッカー部、速水鶴正。
倉間「(……なんで、オレはこんなところにきてるんだ…っ)」
もう一つは、かれこれ何度もそんな思考を巡らせては、煩悶し続けている同じく倉間典人。
間違いなく目立つこの二人は、周りからも好奇な視線を集めている。
速水「や、やっぱり俺には無理ですぅ〜!」
倉間「ッ!……やっぱり板チョコで済ませるしかねぇのかっ」
同時に走り出し、二人は角にて対面を果たす。
速水「…へ、倉間君…?」
倉間「速水…?」
―――---……‥
速水「そうなんですか、南沢さんに……。よかった、俺だけじゃなかったんですね」
倉間「べ、別にオレは南沢にやるとは……。ま、まあ速水も浜野にだろ?」
速水「はい…まぁ…」
二人は非常階段に腰掛け、互いが同志である事に安堵を吐いた。
速水「それにしても、やっぱり変ですよね…。男が男にチョコを渡すなんて……」
倉間「だ、誰もそんな事言ってねぇだろ!?」
速水にキツく返した倉間だったが、内心同じ事を思っていた。
?「あれぇ?倉間先輩、速水先輩!」
頭上から聞き慣れた声がかけられる。
倉間「天馬…?」
天馬「お二人も、バレンタインのチョコを買いに来たんですか?」
速水「え、えぇっと…///」
倉間「そ、そんな訳ねーだろっ!」
天馬「す、すみません!てっきり浜野先輩や南沢先輩にあげるものだと…」
速水「ぅぅ…バレてる…」
倉間「そ、そう言うお前はっ!」
倉間が赤面して、せめてもの反撃と尋ねると、松風はキョトリと目を瞬くとへらりと笑って見せる。
天馬「オレは剣城にです…!」
速水「うわ…直球ですねぇ…」
倉間「くそっ、ハッキリ言いやがって!」
それぞれの反応で落ち込むと、ふと松風の持っている袋が目に入る。
倉間「お前それ板チョコ…?」
天馬「え?あぁ、そうですよ?」
速水「天馬は剣城君に板チョコをあげるんですか…?」
二人は目を見開き、驚いている。
しかし松風の返答に、二人は更に目を見開く事となった。
天馬「違いますよー!ただ女の人がいっぱい居る中でチョコを買うのが無理だったから、秋姉に教えて貰いながらチョコを作るんです。これはその材料ですよ!」
倉間「お前…手作りすんの?」
天馬「はい」
速水「天馬のお世話になってる所のお姉さんに…?」
天馬「はい」
すると二人は顔を見合わせ、頷く。
――――---……‥
――--…‥
天馬「――という訳で秋姉…」
速&倉「「お願いします…!」」
秋「わかった、一緒に作りましょうか!」
松風から事情を聞いた秋は、快く引き受けてくれた。
――こうして、秋姉の料理教室なるものが始まった。
天馬「うわ〜、速水先輩上手いですね〜!」
速水「そ、そういう天馬も、凄く手際が良いじゃないですか」
倉間「………」
秋「ふふ、大丈夫。倉間君のもとてもおいしそうよ」
倉間「…ホントですか…?」
秋「えぇ」
これは、とあるバレンタインデー前日の一幕である。
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P6〜7 南倉
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